時計以外も全般的に、ミニマルで直線的なデザインが好み。シンプルでシャープなスタイルは、とにかくどんなファッションにもフィットするので、本当に重宝しています。

カルティエ「タンクフランセーズ」のピンクゴールド。たぶん、1年365日のうち350日は、この時計をしています。これはもう、男の人の人生に例えるなら“最後の女”的な存在かも。これさえあれば、満足。以来、他の時計に浮気をすることもなくなりました。

この時計を手に入れたのは、確か30代前半の頃。それまでも、同じタンクフランセーズのステンレススティールを愛用していましたが、大人になるに連れて好きなものが決まってくると、ゴールドのジュエリーにばかり傾倒するように。そんな折、タンクフランセーズに肌馴染みのよいピンクゴールドが登場。もちろん、当時の私にはとても高価な買い物でしたが、実物を目にしたら最後、清水の舞台から即座に飛び降りることになってしまったのです(笑)。

そもそも日頃から、Tシャツやジーンズをカッコよく着られるおばあちゃんが目標。そんな時、カジュアルを格上げしてくれるのが、この時計です。ドレスアップシーンであっても、あまりシャレ込むのは気恥ずかしくて苦手なので、失礼のない範囲のカジュアルスタイルに、ジュエリーや靴など、小物で大人の装いを完成させるのが、自分なりのTPO。ジュエリーも少数精鋭主義で、厳選したアイテムを、末永く大切に身に着けたいと思っています。

タンクフランセーズは、ほとんど1年中身に着けていて、もはや身体の一部。そして、20年間をともに過ごしてきたという点においては、身に着けるもののなかで唯一無二のアイテムかもしれません。あらためて、山あり谷あり、様々な時間を一緒に歩んできたと思うと、感慨深いものが。さながら“人生の証人”であり、これからも、静かに見守ってくれる御守りのような存在であり続けてくれるのだと思います。


CREDIT:
ニット/クロエ
ブラウス/デレクラム
リング/ハリー・ウィンストン
バングル/アランジーナ

PROFILE 関戸 智美さん

edit & co. 代表。ブランドのプロデュースやディレクション、PRを手掛けるedit & co.を2007年に設立。現在は、カウチンニットや上質なカシミアストールのコレクションからなるオリジナルブランドedit & co.を展開。

構成・文/村上治子