米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

写真:Collection Christophel/アフロ

すっごく面白いからみんな観てみて! とおすすめしたい作品に出会いました。タイトルは、意味深なものを感じさせる『私が、生きる肌』。ここまでやるの⁉ と思わず唖然としちゃうくらいの“やりすぎ感”が最後まで貫かれていて、観ている間中、一瞬も飽きることがない映画です。

アントニオ・バンデラス演じる主人公は、天才的な形成外科医。彼は自宅に肌襦袢のような不思議な衣服を身につけた女性患者を幽閉しています。一体彼女は何者なのか、なぜ主人公は彼女を治療しているのか? その秘密が主人公の過去とともに明かされていく、という奇想天外なお話。

最初に驚かされたのは、この女性の体の美しさ! “全身ストッキング” の衣裳だから、胸の形やウエストラインなどすべてが一目瞭然なんです。誰しもが惚れ惚れするような体を見て、私も真剣にヨガをやろう、と決意をあらたにしてしまったほど。それくらい、あまりにも美しいラインを持つ体でした。

もうひとつ私が興味を引かれたのは、医学的なこと。いつも美容整形や手術のシーンが出てくると注目して観ているのですが、残念ながら中途半端な映画やドラマが多いんですよね。でもこの映画は全然違う! ああいう風に皮膚の培養や手術をするんだ、と前のめりになって観てしまうシーンの連続で、マニアックな興味もしっかり満足させてくれました。

バンデラスも若い頃のギトギト感がほどよく抜けて、かっこいい歳のとり方をしてるなぁと感じました。主人公の行動の裏に隠されていたものが愛なのか何なのかを判断するのは、あなた次第。私がもしもこの映画の宣伝を任されたら、「生まれ変わりたい人たちに、いい方法あります」ってキャッチコピーをつけたいですね。

『私が、生きる肌』
画期的な人工皮膚の開発に執念を燃やしていた世界的な形成外科医のロベル。彼は非業の死を遂げた最愛の妻を救えるはずだった〝完璧な肌〞を夢見ていた。そしてある人物を、妻そっくりの美女に創り上げていくが……。スペインの巨匠、ペドロ・アルモドバルによる異色のミステリー映画。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2012年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。