米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

写真:Visual Press Agency/アフロ

実話をもとにした『小さな村の小さなダンサー』は、5歳からバレエを続けていた私にとって、少し心が痛くなるような作品でした。

沢東の時代の中国でのレッスンは、子どもたちへの教え方もダンサーの選び方も見たことがないものばかり。
貧しい暮らしのなかで家族から引き離され、理不尽な状況から這い上がるようにしてダンサーになった人がいたんですね。
あの時代のひとつの現実を教えてくれる作品です。

彼が亡命をするまでの物語を観ていて思ったのは、この頃にはまだ本当の意味でのアメリカン・ドリームがあったんだな、ということ。
お金がなくても能力のある人たちが夢をつかんでいく、そのパワフルさを感じましたね。

バリシニコフが華麗に踊る昔のモノクロの映像が出てくるシーンにも、思わず興奮してしまいました。

『小さな村の小さなダンサー』
毛沢東の文化政策によって家族と引き離され、バレエの英才教育を受けはじめたリー・ツンシン。彼は悩みながらもアメリカへの亡命を決意し、やがて一流のダンサーとして成長していく。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2011年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。