2018.5.4
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【植物療法士 森田敦子さんインタビュー】頑張っている日本女性を元気にするために

森田敦子さんは日本での「フィトテラピー=植物療法」の第一人者です。漢方やアロマテラピーもすべて大きな意味で植物療法というカテゴリーの中のひとつ。漢方は服用する、アロマは嗅ぐことが中心ですが、植物療法では飲む、塗る、嗅ぐ、と症状に応じた五感を通した処方で、総合的に治癒していきます。ご自身も、多忙をきわめた生活の中で体をこわしたことをキッカケに仕事を辞め渡仏。植物療法の勉強を重ねる中、心と体のバランスを取り戻すことで、女性はもっと輝けるという確信を持ったと言います。今回は、フランス仕込みの、森田さんが提案する、新しい女性の生き方についてうかがいました。

森田敦子/植物療法士。 大学を卒業し、航空会社の客室乗務員の仕事に就くも気管支疾患を発病。その治療として植物療法を知り、本場のフランスで学びたいと航空会社を退職し渡仏。フランス国立パリ13大学で植物薬理学を本格的に学ぶ。帰国後、植物療法に基づいた商品とサービスを社会に提供するため、会社を設立。2003年には日本バイオベンチャー大賞近畿バイオインダストリー振興会議賞受賞。女性のためのケアブランド「アンティーム オーガニック」での商品開発や、中目黒にAMPP認定・植物療法専門校「ルボア フィトテラピー スクール」を主宰。著書に『潤うからだ』(ワニブックス)、『自然のお守り薬』(永岡書店)など。

 

人生観が大きく揺らいだバブル絶頂期

神田 植物の力を借りて体の不調や、病気の症状を緩和させる「フィトテラピー=植物療法」を、フランスの大学で学び、20年前から日本で啓蒙活動をされてきました。日本では誰もフィトテラピーという言葉すら聞いたこともないような状況から、日本でのキャリアをスタートされたのですよね。大変なことも多かったのではと思います。まずはフィトテラピーとの出会いから聞かせていただけますか。

森田 私は社会人生活を大手航空会社の客室乗務員としてスタートさせました。当時、全日空は中国路線の強化を狙っていて、ちょうど私は大学の中国語学科を出ていて、留学経験もあったので、その能力が買われて、たまたま受けた就職試験に受かったのだと思います。就職をしてからは中国路線の通訳兼客室乗務員として働いていました。でも数年働いていたところでダストアレルギー性気管支疾患という、喘息よりもさらに症状が重い病気を発症してしまい、休職、入院を繰り返すようになりました。

神田 それはストレスが原因で?

森田 今思えばそうだったのかもしません。でも当時はそんなこと思いもしませんでした。ちょうどバブルの絶頂期で、誰もが猛烈に働いていた時代。しかも夜には踊りに行ったり、合コンが連日あったりと思いっきり遊んで、仕事へのモチベーションを上げるという生活をみんながしていた時代です。「ストレス」なんて言った瞬間、弱い人間ははじき出されるような、そんな雰囲気もありましたね。

神田 ストレスという言葉自体、当時はあまり意識されていなかったのでしょうね。森田さんも症状が出る前はそんな生活をしていたのですか?

森田 私はその中でも、自然派でした。毎週、葉山でクルーズ船に乗せてもらうなど、夜より昼間に健康的に遊びたいタイプ。職業柄、合コンにはすごく誘われたけれど、結局一回も行きませんでした。その頃は男女雇用機会均等法が施行される前だったのもあって、女性は寿退社をして専業主婦になるというのが定石とされていました。でも私は「寿退社」とか「専業主婦」という言葉が、どうしても自分では受け止めきれなくて……。もう少し働きながら、この先の人生についてしっかり考えようと思った矢先の発病でした。

神田 その頃はまだフィトテラピーと出会う前ですよね?

森田 大学病院に通って治療して仕事に復帰はしたものの、今度は薬の副作用でアレルギーも発症してしまいました。アレルギーは減感作療法という治療をしたのですが、様々な症状を抑えるためかなりの種類の薬を服用していました。ステロイドを使わなければ、アトピーはひどくなってしまうし、気管支拡張剤を使わないと少し疲れただけで呼吸がうまくできなくなってしまう。やっぱり体がついていかないと思ったときに、フランスのサンルイ島に住む女優で作家の岸 恵子さんの娘さんから、フランスに「薬草学」という学問があることを教えていただいたのです。彼女はフィトテラピーで私の症状も治るのではないかと考え、これが私がフランスでフィトテラピーを学ぶきっかけとなりました。1年後には渡仏し、パリ13大学の薬学部に通い始めました。

 

「更年期のツラさ」から女性を解放させたい

神田 わらをも掴む思いで、会社を辞めて、渡仏したんですね。会社を辞めるのに、迷いはなかったのですか?

森田 実は日本で治療していたときに、医師から「子どもは諦めるように」と言われていたんです。かなり強い薬を使っていましたし、ステロイドを服用していましたから。24、5歳の私にとって、それは人生観を揺るがすほどショックな宣告でした。それまでのんびり考えていた自分の人生と真摯に向き合わなければいけないと強く感じたのです。薬草学を勉強するという新しいことにチャレンジすることで、どうにか自分の焦りを埋めようとしていたのかもしれません。

神田 恵まれた環境から、海外留学というだけでもすごいけれど、さらにフランス語で薬学部の授業を受けるという高いハードルに挑戦していった背景にはそのような思いがあったのですね……。そして、森田さんはその後、43歳で自然妊娠をして、出産をされましたね。フィトテラピーを自分でも実践していく中で、体調が戻ってきた感覚はあったのでしょうか。

森田 大学の先生たちに教えてもらったことを徹底して実践しているうちに、生理も戻ってきたし、肌も髪も、体の調子もだんだんと戻っていきました。妊娠は日本に戻ってきてから10年近く経ってからですが、フィトテラピーを実践し続けていたことで妊娠できる体を取り戻していけたのかな、と思っています。もちろんそれは薬草の力だけではなく、日々食べるものや生活習慣を整えていた効用も大きかったと感じています。私が通ったパリ13大学の薬草学は、医薬学部の専門課程に位置付けられていて、生理解剖学や婦人科、皮膚科、薬学などを総合的に学ぶことができました。薬草の取り入れ方はもちろんのこと、日々の食事……野菜と果物と穀物をいかに組み合わせて摂るかの重要性も学んだし、細胞レベルでの体の仕組みについてまで勉強できました。その結果わかったのは体の内側から整えてあげることで、細胞や粘液、粘膜はつくり直せるということ。それを知識としてだけでなく、自らの体を通して実感していくこととなりました。

神田 自ら植物のパワーを実感されている森田さんが伝えるフィトテラピーだから、説得力があるんですね。女性は年齢を重ねていくごとに体調も変化し、それに合わせて体を整えていく必要があります。日本の女性はもっと中からのケアをしなくてはいけないと森田さんのお話を聞くたびに思います。

森田 今年で私は52歳になるのですが、先日ホルモン数値を測ってみたらまだまだ妊娠できる数値でした。これから妊娠をとは思わないけれど、まだ閉経も迎えておらず、更年期障害の症状がまったく出ていないんですよね。白髪も生えてきてはいるけれど、染めなくても気にならない程度。もちろん見た目という意味では着実に年齢を重ねています。でも体の中の数値はすごく良い状態だし、何より日々エネルギーが湧いてくるのを感じています。私くらいの年齢になると更年期障害で、自律神経失調症やホットフラッシュ、疲れやすさやだるさ、気持ちの沈みに悩む人が多いんですよね。あれをやろう、これをやろうと思っていてもエネルギーが足りなくて動き出せない、更年期障害のせいで人生を楽しめない。それは本当にもったいないし、つらいことです。でも女性ホルモンに働きかけるハーブのお茶や錠剤を飲んだり、薬草学というシンプルなケアで予防ができるというのを今、私自身が体験中。これをより多くの人に伝えていければと考えています。

お茶や、錠剤、チンキ剤と用途に合わせて植物をセレクト

(すべて私物・左から)「コスメキッチン エルボリステリア シングルティザンヌ メリッサ」生理前や女性ホルモンの乱れに。気持ちも明るくしてくれます。 「オーガニック マカ カプセル」ちょっと疲れたな、元気をチャージしたいなという時に。 「コスメキッチン エルボリステリア タンチュメール ゴツコラ」むくみが気になるとき、また集中力をアップしたい時に。 「コスメキッチン エルボリステリア タンチュメール for woman」生理前・生理中のケアに。女性特有の不調が出そうな時に。

フィトテラピーの思想そのものを広めたい

神田 フィトテラピーは敦子さんの活動もあって、徐々に広まってきました。フランスから帰国した後、やはり日本人にはフィトテラピーが必要だと思ったのでしょうか?

森田 フランスには4年近く滞在しました。その間にフィトテラピーの素晴らしさを強く感じ、これを仕事にすると決意して帰国。植物療法に基づいた製品製造とサービスを提供するための会社を立ち上げました。今年で帰国して20年になりますが、はじめの半分の期間を、ほぼ実験と研究に費やしていました。性分もあって習ってきたことを、どうしても自分で確認したかったんです。たとえば、薬草の成分の分析。煮出して飲むものは、煮出したときの成分まで徹底して検証しました。またスパ部門を立ち上げて、つくった製品を臨床するという取り組みも。これは5万人分のデータを目指していて、3年前に達成しました。どれも時間も手間もすごくかかりましたが、それがあったからこそ、1人ひとりの方の症状や体調に合わせてオーダーメイドで処方できる状況を整えられたと思っています。

神田 成分についてのデータと臨床データ、両方をそれほどたくさん持っている人は、森田さん以外にいないのではないでしょうか。最近の森田さんは「ルボア フィトテラピースクール」「インティメール オーガニック」ブランドの印象が強いですが、本来の職業としては研究者だったということですか?

森田 私はリサーチャーといって、分析と商品製造をメインの仕事としています。「インティメール オーガニック」などの自社製品だけでなく、他社商品の製造や、新規の成分の提供も行っています。自社製品がありながら、他社製品も請け負うのを不思議に思う人もいるかもしれないけれど、そうしたほうが植物の力を使った製品がより多くの人に届く可能性が高まりますよね。私にとってはフィトテラピーの思想そのものが広がることが重要だったので、そういった形で事業を展開する選択をしました。その他にもルボアのスクールやスパ、介護の分野など、常に7つや8つの事業を走らせてきました。煩雑に見えますがそれらの事業を通して、製造して臨床し、知識や製品、思想をより多くの人に伝えていくという循環を、社会の中で生み出していっています。

自分を守るために、デリケートゾーンのケアを日常的に

デリケートゾーン専用のアンティームオーガニック。経皮吸収率が高いデリケートゾーンはオーガニックの専用コスメでケアすることが大事。 (左から)インティメール フェミニンウォッシュ¥2000(税抜)、ローズローション¥3000(税抜)、ホワイトクリーム¥2600(税抜)
自分を慈しむ時間を大切にすることで、様々なトラブルを予防できる。女性としての潤いを保つための、膣専用オイル。マッサージするように日々ケアをしたり、産前産後にも使える女性のためのオイル。インティメール バーシングオイル¥10000(税抜)


神田 この20年の活動を通して、フィトテラピーというものが広がっている実感はありますか?

森田 少し扉が開いたかなというくらいかな。まだ漢方ほどではないですよね。ただ漢方は薬剤師にしか扱えないけれど、フィトテラピーは一般の人が扱えるという強みがあります。もちろんしっかり学んでから伝えていくことが重要だけれど、より多くの女性に取り入れていただける可能性は十分あると感じています。

神田 そうなったら薬に頼らずに体調管理をするという文化が広がっていきますよね。私もスクールに通わせてもらって、フィトテラピーは女性にとってとても豊かなチョイスだと感じました。身近な植物の香りを楽しみながら、飲む、塗るなどの処方ができるというのがすごくいい。なんというか、夢がある体調管理法だと思っています。