2018.6.4
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【光野桃 短期連載④】
ヴァネッサ・レッドグレイヴに学ぶ「年齢を重ねた貌の美しさ」

光野桃さんがミモレに帰ってきました…! 新刊の発売を記念してスタートした短期連載。おしゃれのヒントが詰まった一冊から、ミモレ読者に役立つセレブの着こなしアイデアをピックアップして掲載します。一覧ページはこちらです。ぜひご注目ください!(川良)

 

ヴァネッサ・レッドグレイヴのように
歳を重ねたい


 三十代の頃、素敵なおばあさんの写真を切り抜いて、ファイルしていた。
 ヴィスコンティ映画の常連だったイタリア女優、シルヴァーナ・マンガーノが、絹のガウンにサテンのシルバーグレーのゆったりしたパジャマパンツを穿いて、満開の紫陽花の咲く石造りの庭園でくつろいでいる写真。
 ティファニーのデザイナー、エルサ・ペレッティ、ヴォーグアメリカの伝説的編集長だったダイアナ・ヴリーランドなど、憧れのひとは皆、年上で、円熟したスタイルの持ち主だった。
 ところが、いざ自分が彼女たちの年齢になってみると、憧れるどころではないのである。物忘れや遅くなる動き、五十肩や見えづらい目、持病をなだめすかし、毎日を生き抜くので精いっぱい。どんなおばあさんになろうかと夢を抱けたのはまさに若さゆえだった。
 しかしいま、唯一こうなりたいと憧れるのは、女優のヴァネッサ・レッドグレイヴである。一九三七年生まれの彼女が七十歳くらいのときの写真をウィキペディアでみつけた。黒のゆったりとしたローブをまとい、白髪に多分、ノーメイク。皺もシミもある老いた肌を隠そうともしていない。けれど映画「ジュリア」や「裸足のイサドラ」で見せた気品と知的な美しさは健在だ。
 この写真のヴァネッサの一番の魅力は、人生のエネルギーを使い切って生きてきた貌をしていること。重く燻っているもののない清々しさが表情に現れ、それが自由な感じのローブとマッチして美しい。こんなふうに歳を取れたら……。

(光野桃『白いシャツは、白髪になるまで待って』より引用)

 

 

<新刊紹介>
『白いシャツは、白髪になるまで待って』
光野桃 著(幻冬舎)定価1300円(税別)

「60代になって、びっくりするほどおしゃれが自由に、楽しくなった」。そう語る光野桃さんが「年齢を重ねてからの80のおしゃれのヒント」を本にまとめました。それらは「ベージュには黒」「陰影をブルーで着こなす」「毎日デニムとローファーだけで」「あえてノースリーブを着る」「変わりたいとき、メガネを変える」など、実際に毎日の着こなしに役立つものばかり。決して「こうしなくてはならない」というものではなく、「こっちのおしゃれも楽しいですよ~」手招きしてくれているよう。40代の「おしゃれと生き方の
トンネル期」を抜けた先には、こんなに爽やかで自由な未来が広がってくるのかと思える一冊です。


特別寄稿/光野桃 
構成・文/川良咲子(編集部)
写真/アフロ