タレントやモデルが絶大な信頼を寄せる人気スタイリストの風間ゆみえさん。ロマンチックかつ、女性であることの高揚感を感じられる世界観をベースとしたスタイリングに、ミモレ世代の女性たちからも圧倒的な支持を集めています。独自のセンスやファッション観はもちろん、そのライフスタイルも大いに気になるところ。365日働くようなハードな日々を送っていた30代を経て、39歳で結婚。さらに40代に入って湘南に居を移し、現在は葉山で自然を意識するライフスタイルを送るようになったという風間さん。今の暮らしについて聞いてみました。

風間ゆみえ 1971年生まれ。スタイリスト。多くの女性ファッション誌で活躍し、近年はブランドディレクション、バイイング、商品プロデュースなど、その活動の幅を多方面に広げている。著書に『LIKE A PRETTY WOMAN』、『Lady in Red』他。



「今も仕事場は東京にあるのですが、39歳で結婚し、それがきっかけで5年前から葉山での暮らしが始まりました。山の上にある自宅は、遠くに海を臨み、緑豊かな素晴らしいシチュエーション。しかしながら夏の間は、虫たちと共存し、1週間で腰まで届きそうなほど無邪気に育つ雑草に、草刈機の刃が何枚あっても足りない(笑)。自然と共に在ることはそれなりの覚悟も必要ですが、それらから得るものは大きくて、自然の恵みには感謝を忘れないよう心がけています。もともと自然の中にいるのが好きで、私にとって東京は仕事をする場所。20代の頃から気がつけばオンとオフを切り替え、仕事が終わるとすぐに車で郊外へ出かけていました。友達をピックアップして、目的地も決めないで高速に乗り、行き当たりばったりの旅を楽しんだり。そういう自然との触れ合いがあったからこそ、ハードな仕事もがんばれていたのかなと思います」


植物や虫の音で、四季を感じる暮らしが心地いい


時代を牽引してきた超人気スタイリストの風間さん。完全なるシティガールかと思いきや「自然に触れていないと落ち着かない」とは意外。

「東京生まれで、育ちは下町ですが、子どもの頃から自然に触れているのが好きでした。雨の音を聞いたり、星をじっと眺めながら、いろいろなことを考えるのが好きだったんです。幼い頃は人の心の声が聞こえたり(笑)、両親が“来週は●●に行くよ”と言っても“あ、これは行かないな”とか、そういう勘が働く子でした。そのせいでしょうか、いろいろな雑音が聞こえない静かな自然の中に魅かれたのかもしれません。東京で暮らしているときは、アロマオイルのエネルギースプレーなどを愛用していたけれど、今は使わなくなりましたね。そう考えると葉山の暮らしも、夫のライフスタイルに合わせる形ではありましたが、自然な流れだったのかな。今は夜は早めに寝て、朝日が昇ると起きるという生活。 “よもぎが出てきたね”とか、底の盛り上がった土を見て“あ、モグラが動き始めたね”とか、葉山での暮らしは移りゆく四季を身近に感じる、それがとても楽しいんです」

陽射しが心地良い、風間さんのお知り合いのアトリエで。葉山の暮らしでは、朝、天窓からその日の空を眺めることで一日が始まるそう。
 

パートナーに寄り添い、暮らしのリズムが変わるって新鮮


「結婚して一番の変化、夫からの贈り物は、週末(土日)ができたこと(笑)。それまではフリーランスということもあり、曜日の感覚なく仕事をしていましたし、365日休みなく猛烈に働いたこともありました。でも夫という存在ができてからは、会社を経営している彼に合わせて生活が変わりましたね。私の人生に“土日”や“花金”、そして“ブルーマンデー”ができたの(笑)。これは変化のほんの一部ですが、相手に合わせて暮らしのリズムが変わるのは新鮮でした。私は早いうちから、ある程度自分で舵取りして生きてきたから、初めて人に舵を切られる感じで、これがすごくよかったですね。例えば家のインテリアもそう。基本的にキッチン以外は、ほぼ夫主導です。私とは好みもテイストも違うけれど、シンプルで心地のいい空間。100%自分の好きな物だけに囲まれていた暮らしから、自分ではない人が選んだ物の中で生活をするということをやってみて、人の暮らしの中に身を置くのは初体験でしたが、なかなかいいものだなと思います」

 

コンプレックスがあったほうがおしゃれになれる


ところで風間さんにも、40代になってファッションの変化はあったのだろうか。ミモレ世代の女性たちからは、「年齢を重ねるとともに、何を着たらいいかわからない」という声も多く聞かれるが、今の自分に似合う服はどんなふうに見つけたらいい?

「30代前半までは何を着てもある程度着こなせると思うんです。でも30代半ばを超えたら、少し知恵が必要かなって。それは、服を着こなすための知恵。私自身35歳を過ぎて、服を着ていても何か物足りなく感じたり、逆にシンプルなものが似合うようになったりと変化がありました。身長も157㎝なので、服をおしゃれに着こなすのって実は難しいんです。販売されている服は160~165㎝あたりの身長を基準にきれいに見えるように作られていることが多いし、もう少し背は高いほうがやっぱりバランスも取りやすい。でも自分の身長でいかに服がきれいに見えるか、何が自分に似合うのか、今も常に考えます」

「服を着こなすためには、とにかく着てみること。試着は面倒だと感じるかもしれないけれど、ハンガーにかかっているときと体が入ったときは、服の表情は大きく変わるんです。試着のポイントは、自分がチャレンジしたことがない服から着てみること。なんだったら、絶対着ない苦手な色やデザインから着る。そうすると“あれ? 意外と似合うかも?”と思ったり、“やっぱりこれは似合わないな”とか、いろいろな気づきがあるんです。私も以前はパープルが得意ではありませんでしたが、40代になって着てみたらすごくしっくりきて、好きな色になりました。そうやってどんどん感覚が変わっていくことに気づくことが大事かなって。逆に定番の色を着て、“やっぱりネイビーは似合う”って思うのも、ひとつの発見なんです。今までただ安心感で選んでいたネイビーが、“自分に似合うネイビー”という特別な意識に変わるから。実践が知恵をつけてくれるんです。頭にセオリーを叩き込むだけじゃダメ。着て、感覚で覚えなきゃ。鏡の前でいろいろ着て、太い腕は出しちゃった方が意外と目立たないなとか、着ることで気づきが出てくる。コンプレックスなんて、誰にでもあると思うけれど、あったほうがおしゃれになれるんだと思います。どうしたら素敵に見えるようになるか、努力するから」


ファッションがもたらすセラピー効果


「私はお洋服の力って絶大だと思っています。服はその人の印象さえ決めてしまうもの。それに服が与えてくれるセラピー効果もあると思うんです。自分の好きな服を着ているだけでも、そして新しい服を着て鏡を見ているだけでも気分が上がってくるでしょう? 気持ちを上げるためにも、ぜひ今の自分に似合う服をどんどん見つけてもらえたらって。自分に何が似合うのか、そこを知ることをあきらめない人が、おしゃれになれるのだと思うんです」

40代になってから好きな色に変わった、という光沢の美しい青のドレスはSUZUKI TAKAYUKIのもの。


次回は、風間さんが近年興味をもって学んでいるという「体のこと、フィトテラピーのこと」についてお送りします。お楽しみに!

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撮影/三瓶康友 
ヘア&メイクアップ/菊地美香子(TRON)
取材・文/内田いつ子 構成/朏亜希子(編集部)