7月の西日本豪雨は、広範囲にわたって甚大な被害をもたらしました。山口県岩国市もその一つ。「獺祭」ブランドで知られる日本酒を製造する旭酒造では、酒蔵の前を流れる川が反乱して蔵の1階が約70cm浸水。その影響で送電線が破断し、3日間停電してしまいました。

この影響で、150本の発酵タンク(50万リットル強、四合瓶換算で70万本)の温度管理ができなくなり、すべての日本酒が「獺祭」ブランドとして出荷できなくなってしまったのです。

同市出身で、現在モーニングで連載中の『会長 島耕作』の作者である漫画家の弘兼憲史さんは、以前、日本酒をテーマにしたエピソードを書いた時に同酒造を取材したことがありました。そのつながりから「何か力になれませんか?」と同酒造の桜井博志会長に連絡。桜井会長と弘兼さんがやりとりする中で、「被災地全体の復興支援に当てよう」という話になり、「島耕作」のイラストラベルを冠した純米大吟醸「獺祭 島耕作」として販売することが決まりました。

 

1本1200円(税別、720ml)で、そのうち200円を被災地への義援金として寄付されます。「獺祭」といえば、品薄でなかなか入手できないほどの人気の日本酒ですが……。

「0.1℃単位で温度管理をしてきたため、『獺祭』ブランドで出すことはできませんが、純米大吟醸として考えたら十分美味しいお酒。停電によって『獺祭』基準ではなくなってしまったとはいえ、美味しいお酒ができたなら、人様の口に入れていただきたいのが作り手の心情」と桜井会長。

「故郷の被害に心を痛めていた」と語る漫画家の弘兼憲史さん。「できるだけポジティブな形で、被害にあった地域の役に立てるお酒にしたい」という旭酒造の思いに弘兼さんが共感し、実現したそうです。

また、通常の「獺祭」は、醸造方法によって価格帯はさまざま。1,539円の「純米大吟醸50」(4合瓶)から、最高級の「磨き その先へ」ともなると32,400円(4合瓶)に! 今回、被害に遭ったのは、「純米大吟醸50」「磨き三割九分」「磨き二割三分」に加え、「磨き その先へ」も約3000本分も含まれていたそう。今回、すべての日本酒を「獺祭 島耕作」ブランドで、同一価格で販売することになっています。

「『磨き その先へ』になるはずだった日本酒がたまたま買えた人は、宝くじに当たるようなものでラッキーだと思う」と弘兼さん。どのタイミングでどの日本酒が瓶詰めされるかはわからないとのこと。でも、「もしかしたら私が買ったものがそうかも?」と想像を膨らませながら買うのも楽しそう。その確率は約0.5%!

そんなお楽しみもある純米吟醸酒「獺祭 島耕作」。美味しく飲んで、被災地支援ができるなんて、日本酒好きは買うしかない!

 

発売は8/10(金)からで、旭酒造Web店、直営店のほか、「獺祭」取扱の全国酒販店で販売されます。
https://www.dassaistore.com/

撮影・取材・文/吉川 明子