2015.8.7

mi-mollet Short Story
キスを何年休んでますか


*ほぼ毎週(このところ隔週)金曜日に ショートストーリーをお贈りさせていただきます。
*これまでの作品はこちらからお楽しみ頂けます。
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あまりの熱さで蜃気楼のようにみえるアスファルトの表面。
東京・日本橋界隈は、相変わらずの炎暑であり、木元彩絵(さえ)はクラクラとなる。

「あれ?」 

といきなり彩絵は声をかけられた。ワイシャツ姿の男。
矢内亮二であった。何年振りだろう。たぶん10年近くなる。

「うわ! どうしたんです?!」

彩絵は驚きのあまりそんな言葉しか出ない。
「どうしたって、仕事よ。ここの近くのライジングダクトっていう精密機器の会社に用があってね。彩絵ちゃんこそひっさしぶりだね~」

汗をかいている矢内は、全然変わっていなかった。今どきのツーブロックのヘアスタイルが似合っているせいか、かっこよく見える。

「りょうじさん、さすがですね。かわんない~~」

「え? やめてよ。おじさんだって」
「そんなこと、ないない! 変わんないって」


ちょっとだけ時間があり、近くのスターバックスに入った。

「そうなんです……パソコンとか携帯とか、壊れたり換えたりするうちに、連絡先がわからなくなっちゃって……ご無沙汰してて、ホントごめんなさい」