2015.8.10

過去と現在が交錯する映画『フリーダ・カーロの遺品』

©ノンデライコ2015

映画の正式なタイトルは『フリーダ・カーロの遺品 〜石内都 織るように』。石内さんは、現代日本を代表する世界的に活躍される写真家です。その石内さんが、フリーダ・カーロ財団から遺品の撮影依頼を受け、メキシコのフリーダ・カーロ博物館(通称「青い家」)で撮影を敢行。今作品は、その石内さんの姿を追ったドキュメンタリー作品です。

自身のお母様の遺品を撮影した「Mother’s」、広島の被爆資料を撮影した「ひろしま」。その作品を見た財団からのオファーで今プロジェクトは実現。この映画を観たら、絶対に欲しくなってしまう写真集『Frida by Ishiuchi』。
フリーダ・カーロを知りたくて過去に何冊か本を読みましたが、こちらの1冊が私の中で最もおすすめ。自身もフリーダに扮装した作品を発表(2001年『私の中のフリーダ 森村泰昌のセルフポートレイト展』@原美術館)した美術家 藤村泰昌氏が一見とっつきにくそうなフリーダ自身や作品の魅力を愛情たっぷりに解説。

当初は「フリーダ個人にも、絵にも、あまり関心がないのだけれども……」と言っていた石内さんが、フリーダと交信しているかのように(フリーダがまるで生きているかのうように!)関係性を深めながら撮影を進めていく、緊張感あふれる撮影風景に見入ってしまいました。

さらに、フリーダというアーティストを生んだメキシコの風土、伝統、そして、現在もその中で生きている女性たちにもこの映画はスポットをあてていきます。

小児麻痺や交通事故の後遺症で長い時間を横になって過ごさざるをえなかったというフリーダ。ベットの天蓋につけた鏡を見ながら作品を描くことが多かったため自画像が多くなったとも言われいるのだそう。©ノンデライコ2015

小谷忠典監督がインタビュー記事で語られていました。「今作は時代を超えて、写真家である生者と画家である死者が出会い、交わります。生はこちらで、死はむこうであるという境界が曖昧な国・メキシコで、僕は想像力を働かせながら2人の女性アーティストを見つめました。観る人に、死と再生の物語が届けば幸いです」と。

独自のファッションセンスで、当時の社交界でも注目を浴び、『ヴォーグ』の表紙にとり上げられたり、スキャパレリやゴルティエがフリーダをテーマに発表したことも。今ではファッションアイコンとして定着。©ノンデライコ2015

メキシコという、昔ながらの伝統が今も脈々と息づく国の空気をなんだか羨ましく思いながら……「思い」というものは、現在を生きている人が真摯に受け止めることで、きちんと未来に広がっていくものなのだな、と思う編集部・大森なのでした。