シンプルなことでいい
生活の中でできることが美につながる

 

とはいえ、雑誌や広告の撮影、TVドラマの地方ロケなど、とにかく目が回るほど忙しいのも事実で……。仕事と自分の時間の両立、さらに言うと、美しさをキープするためには、何か特別な秘訣があるのだろうか。

「実は私、エステはおろか、パックすらしたことがない自分放置型人間なんです(笑)。さすがに、40を超えて、シミやたるみが気にならないといったら嘘になります。しかし、それらは、40数年生きてきて刻み込まれたもの。私は嫌いじゃありません。笑ったとき、目尻に寄る笑いジワは幸せそうに見えるじゃなですか。エイジングに逆らって、過度にケミカルなケアをしたり、高級な美容液を使ったり、外側から何かを入れようと必死になるのではなく、運動して汗を出すとか、規則正しい生活をするとか、自分の身ひとつでできることがあるはずです。心と身体に必要なことは、とてもシンプル。朝目覚めたら窓を開けて空気を入れ替えたり、ベッドをいつでもきれいにメイキングしたり、家族や大切な人と自炊した美味しいごはんを食べたり、家の掃除をいつもより頑張ってやってみたり……。日常生活を気持ちよく過ごせるように心がけるだけで、心身によい効果があると思っています。なぜなら、私自身がそれを体感しているから……。ボロボロの時代を乗り越え、今の生き生きとしている自分が好きですし、何より、忙しい中でも笑顔で毎日を過ごせることに喜びを感じています」

ヘアメイクというのは〝飾る〟のが仕事。しかし、それを天職とする岡野さんの素顔は、それとは真逆。仕事もプライベートも関係なく、「生活」は誰の日常にもあって、それを整えることで、身体・心・肌をクリーンに保つ。岡野さんの日常は、美の本随を物語っている。そして、それは、私たちにだって実現することができるはず。なぜなら、答えはとてもシンプルなことなのだから。

撮影/目黒智子 取材・文/夏野りんご