著者の高橋俊介先生はキャリア研究の第一人者で、「キャリアオーナーシップ」という言葉が生まれるよりずっと前から「ピラミッド組織」の対局として「自律組織」という概念を提唱してきました。
第一線の小チームもしくは個人が主体的に仕事を回していく「仕事自律」と、自分独自の提供価値を生むために主体的に学ぶ「学び自律」を相互に関連させながら回していき「キャリア自律」を実現することこそが、人生を切り拓く。「学び直し」「リスキリング」がなぜ必要なのか、私はこの本を読んではじめて理解した気がします。
高橋先生が言う「キャリア自律」とは「自分に向いた仕事につくこと」ではなく、「自分らしさ」の連鎖により結果的に自身のキャリアができていくこと、「自分に向いているように仕事をすること」です。
少し難しいので私の仕事を例にとって説明すると、こういうことかなと思います。
私は、ウェブマガジンmi-molletの編集長としてメディアを運営をしながら、メディアの価値を高めるために、コミュニティ〔ミモレ編集室〕やコンセプト型ECショップであるmi-mollet STOREを立ち上げ、「キャリアと人生」カテゴリーを作って、コンテンツ配信をしてきました。そのたびに学びを少しずつ広げ、仕事に活かして、挑戦と学習を繰り返しながらmi-molletというメディアの提供価値を深めてきたなかで、気がついたら私自身のキャリア不安は薄れていました。
会社や上長から指示される「受け身の学び」は一切ありません。新事業をスタートするたびに、社内外のメディアとは違う分野の人に接して「越境学習」し、逆にメディアが持つ力や編集者が持つスキルについて改めて見つめ直すこともできました。
この本には「独学を実践するためのヒント」が丁寧に書かれていますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
ミモレの「ミドルエイジ女性の幸せを実現したい」というミッションは、私自身のライフテーマとシンクロしていって、学べば学ぶほど皆さんに提供できるものは増えていく気がしています。本のなかで高橋先生はこれを「キャリアの背骨」と呼んでいます。「キャリアの背骨」ってよい言葉だと思いませんか? いつか私がmi-molletの編集長を卒業する日が来たとしても、私の「キャリアの背骨」はきっとなくなったりしないでしょう。
本書はこんなふうに結ばれています。
若い世代も、ミドルもシニアも、生活のすべてにおいて独学力を身につけ、主体的に学ぶことで人生のオーナーシップを取り戻して欲しいのです。
ーー『プロフェッショナル人材として生き抜くための50のヒント キャリアをつくる独学力』より
キャリアとは「職業キャリア」だけではありません。「ライフキャリア」においてもそうです。「自分らしさ」「自分ならではの提供価値」を自問自答し続けて「人生のオーナーシップ」を自分の手に取り戻すこと。どうすればそれが叶うのか、読者の皆さんと一緒にこれからも考えていきたいと思っています。
- 1
- 2
Comment