自分の子どもがいじめの当事者だと知ったら、いじめられた子が登校拒否になっていると知ったら、あなたはどう対応しますか。3月30日に発売されたセミフィクション『娘がいじめをしていました』では、加害者・被害者それぞれの立場から“いじめ”について語られています。

加奈子は、夫と娘・愛と三人暮らし。いじめのニュースを見て、なぜ子どもがいじめられているのをわからないんだろう、とかつては他人事だと思っていました。

 

愛と同級生の小春の母親、千春。ある夜、娘の様子がおかしいのを察しドライブに連れ出すと、愛ちゃんに無視されている、と娘が答えました。

 

娘は詳しくは話してくれなかったけれど、心配になった千春は学校に、娘と愛ちゃんのことをよく見ていてほしい、と連絡をしました。学校からの連絡はないまま数日が過ぎた時、事件は起きました。

 

加奈子の元に電話が。「愛ちゃんが小春ちゃんをいじめている」。電話は千春さんからでした。動揺しながらさりげなく娘に聞く加奈子。しかし笑顔で「何もない」と言う娘に気味悪さが湧き上がってきます。夜に夫と二人で聞き出そうとすると、言い訳をする娘に思わず加奈子はキレてしまいます。

 

加奈子はかつていじめられっ子でした。当時のいじめっ子のことを一生許せない彼女は、自分の娘も許せなくなっていたのです。
その後、千春に呼ばれて、加奈子たちは家族で謝りに行きます。小春ちゃんは顔を出しませんでしたが、加奈子は涙ながらに謝罪し、娘にも頭を下げさせ、この件は鎮まるように思えました。しかし、加奈子の心にはこれで良かったのか、という思いが残ったまま。

 

そして、事件がまた起こります。

一方、小春ちゃんは登校できないままでした。学校に行きたい気持ちはあっても翌朝になると布団をかぶって起きられないのです。普通に登校してほしいと願う千春さんは思わず娘に八つ当たりをしてしまいます。
いじめによって私たちの生活は壊されたのに、向こうは謝るだけ? 悔しさといらだちに襲われます。

「被害者側はもう元通りにならないのに、加害者側は謝ればそれで終わりなのか」というのが、双方の母親が持つ感情です。謝罪に行った後、普段通りに過ごす愛ちゃんに対し、登校拒否になった小春ちゃん。もう一度謝りたい愛ちゃんが書いた謝罪の手紙を渡そうとすると、千春さんはこう叫びます。

 

また、加害者家族が、加害者本人と自分とを切り離したくなる感情も描かれます。加奈子は、自分は何もしていないのになぜこんな目にあわなければならないのだと、現実に向き合えなくなります。
母親の立場をつい忘れ、被害者目線になり、娘に「気持ち悪い」「顔も見たくない」と言い放つ彼女。どうするのが正しいのか、迷い苦しみます。

苦しみながらも子どものために悩みながら行動する母親二人に対し、夫を含めた外野はあれこれ綺麗事を言ってきます。冒頭の加奈子たちのように他人事だと思っているからなんですよね。

最後に皆さんに聞きたいのは、この質問です。「自分の子どもは人をいじめないって思ってますか?」

 

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<作品紹介>
『娘がいじめをしていました』
しろやぎ 秋吾 (著)

中学時代にいじめられた経験を持つ赤木加奈子はある日、小学5年生の娘・愛が同級生馬場小春をいじめていることを知り、家族で馬場家に謝罪に向かう。加奈子たちの謝罪はその場では受け入れてもらえたものの、小春はその後、不登校になってしまう。いじめ問題を加害者家族、被害者家族双方の視点から描く、意欲的セミフィクション。


作者プロフィール
しろやぎ 秋吾

イラストレーター・漫画家。SNSやブログなどでフォロワーから募集した話や家族の話を公開している。『10代の時のつらい経験、私たちはこう乗り越えました』(KADOKAWA)、『フォロワーさんの本当にあった怖い話』(双葉社)など。
Twitterアカウント:@siroyagishugo


構成/大槻由実子
編集/坂口彩