初めての金沢訪問、金沢市内にはほぼほぼ夜のSUSHI TIMEしかいなかった有田です。さて、石川県といえば「能登」、そして能登といえば「能登上布」です。憧れの夏きもの、上布の産地はいくつかありますが、能登と宮古、越後、近江が4大上布として有名らしく、せっかくここまで来たので、ちょっくら足を伸ばして行って参りました!

最盛期には120軒以上もあった「能登上布」の織元も、1982年には最後の1軒だけになってしまい・・・・・・。それ以来、石川県の無形文化財「能登上布」を守り続けている「山崎麻織物工房」に今回はおじゃまします。事前に工房見学と織物体験を電話で予約。同行者には“買いそうになったら、絶対に引き止めてね!”と何度も頼み、いざ出発です。工房は、金沢市内から車で約1時間の場所にありました。

能登上布の織元「山崎麻織物工房」。きもの雑誌で何度も取材されています。

能登上布は芋麻を細かく裂いて糸にし、染めて、絣(かすり)模様を織り出しますが、実際はそれぞれに細かな段階と複雑な工程があり、熟練の職人技が必要。絹糸にしか思えない細くて艶やかな芋麻の糸に触れ、絣模様をつくる染めの型板なども見せてもらい、職人さんが織っている様子を見学してから、体験用の帯を織ることにします。

両手両足をばらばらに動かさなくてはならず、うまく行くと気持ちよいのですが、ほとんどうまく行かず、杼は詰まってばかり。横糸が1色の帯でもこれほどの緊張感・・・・・。どんなに熟練の織り手さんでも、絣模様の着物を織る時はこれ以上の緊張がずっと続くんだろうな。集中力のない私には無理だわ。などと気落ちがあっちこっちに飛びつつ、早くも5往復でギブアップです!

おっかなびっくりの織物体験。

布の美しさはもちろんですが、これだけの人と時間を費やして生まれる一枚の布。体験前の見学段階でじつは完全に“欲しいスイッチ”が入っておりまして、同行者もこれはダメだ・・・・・と引き止めるのを諦めたそう。で、さんざん悩んで持ち帰ったのがこちらです。黒に近い紺色に桜色の細い縞が入った私には珍しいチョイス。いつものように「仕立て屋 凛」にお願いし、今年の夏に着たいと思います。

今まで食指がのびなかった絣模様も、能登上布は気品があってとても素敵でした。いつかは欲しいな。
すべての織物見本があり、オーダーすることも可能です。

きものだけでなく、どの業界も安価なものに多くが流れ、人手や時間が掛かる伝統的な製法のものは廃れぎみと聞きます。本当に微力ながら、買うこと、着ることで少しでも伝統工芸が生き延びることができたら、そんな思いで今回も結局はお買い物。これは、決して言い訳ではありませんw

次回のために、能登本で情報収集。東京の出版社に勤めていた方が、地元に戻り出版している機関紙です。
地入れが終わり、届いた反物。さらっとしてひんやりした質感。透け感も涼しげです。