悶々としていた40代前半。
その目を見開かせてくれた建築との出合い

建築もインテリアも素人な状態で、手探りで始めた『モダンリビング』編集長としての仕事。編集部員と一緒になって経験を重ね、3年後には黒字化、5年目の2007年頃には「なんとなく思い通りにできるようになったかな」と実感が持てるようになったという下田さん。

 

「『モダンリビング』に移って、建築というものと向き合えたことがすごく大きかったと思います。建築って世の中で一番大きなアート。素晴らしい建築に出会うことができたのは感動的でしたね」

下田さんが『モダンリビング』編集長に就任したのは44歳の時のこと。40代前半は『ヴァンテーヌ』での仕事に新鮮味を失っていた時期だったと振り返ります。

「40代前半は“低め安定”って感じでしたけれど、『モダンリビング』に移ってからはとにかく仕事中心!目の前に降ってくる問題を次々に片付ける毎日でしたが、その中でいろいろな発見もあったし、自分の暮らしに対しても目を向けるようになりました」

でも、悶々とした時間も必要だったという下田さん。

「落ち込む時期もあれば、ジタバタする時期もある。ジタバタしないと次につながらないと思うんです。そうやって、自分の中にいろいろなことを蓄積していて、『モダンリビング』で一気に爆発したのかも(笑)」

そんな下田さんが大切にしている言葉は「今日が一番若い日」。誰だって過去の若い日に戻ることはできません。自分のこれからの人生の中で、自分が一番若いのは今日という日です。

「そう考えてみると、ちょっと勇気が湧いてきませんか? 思い通りにいかないこともたくさんあるけれど、それはしょうがないこと。だったら今できることをやったほうがいいと思うんです」

過去と今を比べても仕方がない。
人生で今が一番いいと信じることが大切

20代や30代も面白かったし、40代も悶々としていた時期はあったものの、充実した毎日。そして50代の今も楽しいと語る下田さん。

 

「過去と今を比べるとか、今と将来を比べることってあまり意味がないと思うんです。自分の中で常に今の自分が一番いいと思うことこそ、ハッピーに過ごしていくコツ。客観的に見たらハッピーに見えないこともあるけれど、生きてきた人生の中で今が一番いいと信じ、思えるかどうかが大事」

女性には人生の選択肢がたくさんあります。結婚して家庭に入る人もいれば、ずっと仕事を続ける人もいます。子どもを産むか産まないかも大きな選択です。同年代の女性に目を向けても、全く異なった人生があり、それぞれのライフスタイルを持っています。だからこそ、「誰かと比較することなんてできない」と下田さんは言います。

「こんなはずじゃなかったと思う人や、あの時こうすればよかったと思う人もいるかもしれません。でも、それはあなただけじゃなくて、みんなが抱えていること」

そんな下田さんは、子どものいない人生を歩んでいますが、もし子どものいる人生を選んでいたら、今の仕事のキャリアや人間関係、そこから得られる楽しみや喜びもなかっただろうと言います。

「人生にはたくさんの選択肢があるけれど、選ぶことができるのは1つだけ。両方手に入れることは絶対にできないんです。全てを手に入れているように見える人がいたとしても、その人が人生の中で捨てたり諦めてきたものはたくさんあるはず。だからこそ、自分が選んだ人生に後悔してほしくないし、誇りを持ってほしいと思っています」


後編は、下田さんが考える『美しい暮らしとは?』
7月22日公開予定です。お楽しみに!

 

発売記念 サイン本渡し会/下田結花×大草直子トークショー
開催決定!

7月28日(木曜日)13時〜@二子玉川 蔦谷家電2階 BOOK
※席に限りがございますので、お早目にご予約ください。
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モダンリビングの編集長を長く務め、多くの家を取材し、さまざまなインテリアを見てきた著者。その著者が心地よい住まいにするための自宅マンションで行ってい るインテリア・暮らし方のアイデア集。決して大きな家でなくても、お金かけなくても、だれでもすぐにマネできそうな小さなアイデアや考え方を写真とともに 紹介していきます。実例写真があるからわかりやすい!
 

下田結花
1959年4月5日生まれ。ハースト婦人画報社・モダンリビング・パブリッシャー。旧・婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)に入社。料理の単行本、マナー、メイク、着物の別冊などの編集を経て、雑誌『ヴァンテーヌ』に14年間在籍。2003年より13年間『モダンリビング』編集長を務める。現在、『モダンリビング』の全体を統括するとともに、ウェブサイトで発信。インテリアのプロから一般まで幅広くインテリアの講演、セミナーなどを行っている。

撮影/目黒智子 取材・文/吉川明子 構成/大森葉子(編集部)
 
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