入院したら持って行けるように、と両親のために買った折りたたみの椅子。モーエンス・コッホのデザインしたフォールディングチェア、実は、北欧の名作椅子の一つです。インテリアのことなど何も知らない母が、しみじみと「きれいな椅子ねえ」と言ってくれました。美しいものは、知識を超えて人の心を打つのですね。

今はすっかり安定し、自宅で普通の生活ができるようになった母ですが、一時は寝たきりになるのでは…と思ったほどでした。退院し、ベッドから離れても、ほとんどリビングのソファで寝たり起きたり。そんな母にして上げられることは限られるのですが、できるだけ部屋をすっきりさせておこうと心がけました。薬の袋が散らからないようにカゴにまとめ、椅子の位置を整え、キッチンも母がしていたように何も置かずきれいに拭き上げる。体調が悪くても、好きな服を着たり、化粧をしたりすると、しゃきっとするように、整った部屋は心を支えてくれると思います。素敵なインテリアでなくてもいい。せめてきちんと片付いてすっきりとした空間であればーー。インテリアにはそんな力もあるのです。

 

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