「何かを伝える」という目的だけであれば、電話でもメールでも可能です。けれど、手紙はその「経過」に意味があると思うのです。書いている時間は、相手を思う時間。これは、去年まで続いていた母との文通の証。母の文字が今も私に語りかけてくれます。

4年前、自宅をリノベーションして何が変わったかといえば、「経過」を楽しむことができるようになったことでしょうか。例えば料理をしていても、以前は「食べるために作る」ということが目的でしたから、作る途中は作業にすぎませんでした。けれど空間が変わり、ひとつひとつ使いやすさが整い、ゆったりと気持ちよく料理できるようになると、その作業自体がとても楽しいものになったのです。目的地へ着くためにたださっさと歩くことと、途中の景色を楽しみながら散歩をすることの違い、といえばいいかもしれませんね。結局、暮らしとは、結果ではなく経過を楽しむことに意味があるのだと思います。

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