歌舞伎「梅雨小袖昔八丈ー髪結新三ー」を観てまいりました。江戸の悪党、髪結の新三(しんざ)が、お金目当てに大店の美少女を誘拐して拉致、身代金で一儲けしようと企むお話です(大部分省略&割愛・笑)

橋之助丈の新三がかっこいい!

目に青葉 山時鳥 初鰹ーー髷にさしたる房楊枝 浴衣の裾をかいどりて 髪結新三はいい男…粋でいなせな江戸っ子の悪党、新三の湯帰りのようすを描いた小唄です。上機嫌で朝風呂から帰ってくる途中、当時とても高価だった初鰹を魚屋さんから景気良く買う場面で「江戸っ子は”初”に大金を払うんだ」というセリフがありました。なんでも一番初めじゃなくては格好良くない…まさに江戸っ子気質の最たるもの!というより江戸の悪人は粋だったり格好良かったり可愛かったり、ヒーローのような扱いだったのですね。今回は中村橋之助丈のニヒルな「格好良い新三」を堪能しました。いま自宅で「粋で洒落てて憎めない新三」、中村勘三郎丈の映像を観ながらこの記事を書いています。役者さんでイメージが変わりますが、それも楽しみのひとつです。

勘三郎丈の新三。元結(髪を結わく紙の紐)を襷に、手には道具を入れた台箱を持っています。

新三の職業の「回り髪結」は、店を持たずお得意先を回って髪を整えて歩く、髪結の中でも荒っぽい…カタギではない人が多かったようです。ですので悪事と背中合わせで、常にケンカとお金と女性のトラブルがごろごろしていたようです。でも江戸の人々はこういう悪党の存在を認めて楽しんでいたのですね。

歌舞伎を観ていると「ええええ!?これで良いの?」「このあとこの登場人物たちはどうなっちゃったの?」と疑問が次々にわく現代人の私…いやいや姐さん、歌舞伎にそれを求めちゃ野暮ってもんですよ…新三が片頬笑んでいる姿が目に浮かびました。新三さんの言う通り。歌舞伎でしばし現実を忘れ、江戸の世界を楽しませていただきましょう。