2017.5.8

舞台「名人長二」の稽古場にて〜小泉今日子さん舞台にかける思い〜

「ダメだ!もう一度!」演出家の怒号が飛び、一瞬にして張り詰めた空気が漂う・・・ここは、舞台「名人長二」の稽古場。

大ベテランの俳優さんを目の前に何度も同じセリフを繰り返してみるが、プレッシャーが覆い二進も三進も行かない様子。彼女はまだ若手の女優・・・艶っぽさ出すことなんて、40半ばの私でも正直わからないのに、彼女自身もどう解釈して良いのかわからないというのがホンネだろう。なんと、厳しい世界。

舞台から降ろされ、彼女をそっと呼び出し外へ連れて行く一人の女性、それがこの舞台のプロデュースを手がける小泉今日子さん。

「名人長二」舞台の稽古場にて。いつも笑顔が素敵♡

いつも舞台のセンターに存在する彼女が、裏方の仕事に徹していた。女優としての経験からと母親的な役割を担いながら、若手の俳優さんの指導も重要な役割の一つなのだろう。

周知の通り、彼女はアイドルを経て、ドラマや舞台など一線で活躍している、誰もが憧れる女性。変わらない笑顔、媚びることなく等身大の自分をさらけ出し、自然体でしなやかに生きる様は、ミモレ世代の私たちにとって励みと感じている人も多いだろう。

不動の人気を誇りながら、なぜ、今あえて舞台などを制作する会社「明後日」を立ち上げた理由を聞いてみた。

「色々舞台を経験し、様々な役者さんとご一緒し、お芝居の深さを知っていくたびに、同じ志の役者仲間や才能ある若い人たちと同じ夢を追いかけたい、と思ったのがきっかけ。そんなときに劇団『ふくふくや』でご一緒した山野海さんや「シダの群れ」(作・演出 岩松了)で共演した豊原功補さんとの出会いが、私の気持ちを大きく動かしてくれたの。同じ役者として、とても頼もしい存在。10年前、電車に揺られてる時に『四谷怪談』をこんな話しにしたら・・・という構想が舞い降りて来たという話を山野さんから聞いた時に鳥肌が立ったの。」

それで、やってみよう!というのが「明後日」の一作目「日の本一の大悪党」だった。

2016年に上演された「日の本一の大悪党」お相手役は、今ドラマでも大人気の安田顕さん。

「第一弾では、初めて演出にも挑戦したのだけど、ほぼ同世代のベテラン俳優さんが周りを固めていたので、みなさんに助けてもらいながらやらせていただきました。」

人との関係性も舞台を作り上げる重要なプロセスだと思うのだが、今日のお稽古を見ても、驚くほどにアナログで、一つ一つ丁寧に、「人の手」によって作られているのを目の当たりにし、ショックでもあり、感動だった。関係性が希薄なこの時代、情熱を持ってやり続けるのは大変なのでは?

「さっきも若い女優さん怒られていたけど、昔は叩かれたり、本当にこれどころじゃなかった(笑)。先輩俳優さんたちが台本を読み込んで準備し、本気で向き合っている中で、若手俳優が準備不足だと、経験のレベルからも足を引っ張ってしまう。厳しいかもしれないけれど、こういう現場で大ベテランの方々と芝居を学べるのは良い経験。最近は、どこの現場に行っても優しい人が多くて、若い俳優の方が偉そうに見えたりもして、演出家と出演者の関係性が逆転してる。だからこそ、先達から受け取ったものを次の世代へ渡すための中継を私達がしなければならないと思う。何を残して何を渡せるのか、真剣に向き合い、その精神や血脈をきちんと引き継ぐというメッセージや、今のエンターテイメントの世界に果し状を送ることが、今回の舞台の裏テーマになっているの。なので、ぜひ若い方にも観て欲しいと思っています。」

これは役者さんに限っての問題ではない。時代はものすごいスピードで便利にグローバル化しているのにも関わらず、それに反比例するかのようにコミュニケーション能力の低下や人間関係の構築が難しくなってきているような気がする。世代の違いなのか、共通言語を見いだすことさえも難しい今、次世代への教育や継承は骨折りな作業になってきている。

特に役者さんは、他人の「誰か」を演じるわけで、セリフの掛け合いの一つにもコミュニケーション能力が問われるような仕事。コミュニケーションとは単に発する言葉だけでなく、相手のことを理解しイマジネーションすることの一連のワークだ。きっと小泉さんもその難しくも魅力ある役者という仕事に、情熱ある仲間と従事することが楽しくて仕方がないのだろう。

■「明後日」の第二弾「芝居噺 名人長二」の見どころは?

「実はユーモアたっぷりです。元来、落語の持っているおかしみと滑稽な人間たちが一生懸命そこに生きているというとこが一番の見どころ。原作はフランスのモーパッサンの『親殺し』で、クライマックスは読む人に委ねるというものでしたが、今回は作・演出の豊原功補さんが独自の切り口で解釈をし、クライマックスは儚く切ない、でも頼もしい未来を感じる場面になっています。う〜ん、こうやって言葉で説明すると複雑なお話のように聞こえてしまうかもしれないけれど、誰もが楽しめる作品になっています。

また着物が好きな人も必見かもしれません。落語の中には登場人物を想像させるため身につけた着物や小物などをこと細やかに説明することが多いのですが、今回はそれを具現化させます。例えば、糸織藍万の袷に、琉球紬の下着を袷重ねにして、茶献上の帯、小紋の絽の一重羽織、というような、今ではなかなか手に入らないようなものでも出来るだけ本物に近い形で役者に着て貰います。」

■舞台の魅力とは?

「生身の人間のエネルギーをそのまま感じれるところ。映画のように100年後もフィルムで受け継がれるものも素敵だけど、今一瞬の空気を共有するのは舞台ならではの醍醐味。その日その日の空気感が違うのもおもしろかったりするものです。映画に比べればチケットのお値段は高いのですが、ぜひ舞台に足を運んでその臨場感を楽しんでいただきたいです」

超ベテランの俳優が脇を固め、豪華なキャスティングも見どころの一つ。明後日のツイッターはこちらから。随時情報がアップされます!

小泉さんのこの熱い思いで結成された「明後日」第二弾の舞台「名人長二」は、5月25日(木)〜6月4日(日)紀伊国屋ホールにて。チケットや舞台の詳細はこちらから。

5月12日(金)「オールナイトニッポン」で一夜限りのパーソナリティー「小泉今日子のオールナイトニッポンGOLD」(22:00~24:00)がオンエアー予定。今回の舞台「名人長二」にご出演する豊原功補さんと森岡龍さんがスペシャルゲスト。この舞台の魅力を色々と聴けそう!

 

5月17日(水)「コイズミクロニクル〜コンプリートシングルベスト」が発売予定。デビュー35年を記念して、「私の16才」から、近年ではドラマ「あまちゃん」挿入歌としてヒットした「潮騒のメモリー」、最新シングル「T字路」までの全曲が揃います!初回限定プレミアムBOX特典は、『コイズミシングル〜小泉今日子と50のシングル物語』など書籍やビジュアルブック『コイズミ図鑑』の豪華アイテムが♡

止まることなく進化し続ける小泉今日子さん。これからも目が離せません!