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重荷になっている人間関係は「透明人間」で乗り切る

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日本のお母さんたちは、“ママ友”と言われる人間関係に苦労していると聞きます。だからストレスがたまって、モノを買ってしまうのかもしれませんね。私は人間関係もシンプルであることを心がけています。大切に思う人とだけ付き合うことが目標。そこで、自分が本当に付き合いたいと思っている人以外からのメールは、思い切って返信しないことにしています。それでも縁のある人というのは、不思議と途切れないものです。自分を大事にするには、余計な人間関係もある程度整理しなければ。でないとエネルギーをどんどん取られてしまいます。エネルギーはお金より大事ですから。

そうはいっても仕事をしていたり子供のことを考えたりすると、簡単には切れない人間関係も多いことでしょう。私はそんなとき、つまらない人間のふりをするのです。これはどういうことかというと、何を聞かれても何を話されても、「そうねー、そうねー」と淡々と反応して本音のところを見せない、という術です。たとえば「それ素敵ね、どこで買ったの」という質問には、「義理のお母さんからもらった」とポーカーフェイスで答えて、自分の好みを見せないのです。何かに誘われたときはもちろん断るのですが、それだけだと角が立ちますから、「金曜の夜なら空いてるんだけど」と、やはりポーカーフェイスで、相手が絶対に断るような誘いを返すのです。すると相手は何だか手応えがなくて、だんだんとアナタに興味を失い、去っていきますから。

私は自分にとっての豊かな時間をできるだけ多く持つためにも、透明な人間になりたいと思っているのです。


ドミニック・ローホー
著述家。フランス生まれ。ソルボンヌ大学で修士号を取得し、イギリス、アメリカ、日本の大学で教鞭を取る。様々な国に移り住む中で、モノを持たず豊かに暮らす「シンプルライフ」を確立。それを本にまとめた『シンプルに生きる』(講談社+α文庫)がベストセラーに。他に『シンプルリスト』『99の持ちもので、シンプルに心かるく生きる』(ともに講談社)など著書多数。また禅寺や墨絵を通して日本の精神文化に理解が深いことでも知られる。


〜次回は「SNSで人の幸せに惑わされない」 6月29日公開予定です〜

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第四回「「ノーセカンドチョイス」と「ワンアクション」が豊かな時間を生む」はこちら>>
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取材・文/山本奈緒子 構成・写真/大森葉子(編集部)