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次世代を担う若手職人たちの米沢愛②【from米沢サテライト】

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歴史ある産業や昔ながらの老舗が、若い世代にしっかりと受け継がれている米沢。これからの未来を担っていく若手の皆さんに、それぞれが目指す米沢の産業のあり方についてお聞きしました。

東京からUターン。“米沢だからできること”をカタチに

 

ほかの土地も見ているからこそわかる、米沢の魅力もきっとあるはず。そう思い訪ねたのは老舗洋菓子店の『梅花堂』さん。4代目の佐藤大樹さんは高校卒業後すぐに上京し、西馬込『ペルージュ』で4年、葛西『アマレット』で6年修業。その後パリにも3ヵ月滞在し、レストランのデセールを学んだそう。そのまま東京でお店を、とは考えなかったのでしょうか?

「はじめからうちの店を継ぐつもりで、東京で勉強して30歳で戻ってくると決めていましたから。それにお菓子屋さんでいうと東京はもう飽和状態というか、新しい店の入る余地はないと感じたので。実際、僕より少し上の世代はどんどん郊外に出ていってますし、ならいっそ地方のほうがいろいろチャンスもあるんじゃないかと。あとは、いい材料が安く手に入るというメリットもありますね。昨年の秋にタルトタタンを出した時は、りんご農家の友達から、品質に変わりはないけれど、市場に出せないキズものを安く仕入れさせてもらいました。コストが低ければ、価格も抑えられる。東京の職人仲間には“なんでその値段でできるの?!”と驚かれましたね」

見ているこちらまで心和んでしまう仲良し一家。お母さまの千秋さん、妹の恵里香さんも一緒にお店を盛り立てています。実は恵里香さんも東京からのUターン組。米沢は世代が若いほど戻ってくる人が多いのだとか。

昨年戻ってきて、今年7月には正式にお店を引き継ぎ、内装なども一新してリニューアルオープン予定。リニューアル後のコンセプトは「おしゃれな言葉でいうと“レトロモダン”」とのこと。そこには、歴史あるお店への敬意も込められていました。

「何代も続いた店を引き継げたことが僕の強み。昔からの常連さんもいますし。なので斬新なものというよりは、長く愛される昔ながらのお菓子を、少しだけ今っぽく提案していけたらと思っています。あとは来るたびに新鮮さを感じてもらえるように、季節感は大切にしていきたいですね」

いただいたケーキ、どれもほんとうに美味しかったです!「(左上・黄色の)モンブランは父の作で、これはリニューアル後も残すと思います。この味は越えられないので」。

またお店の代替わりと平行して、それ以外の活動も精力的に行っている佐藤さん。最近では高校時代の友人たちと一緒に月1回のイベントを開催、そこで出したフォンダンショコラはかなり好評だったそう。

「やるべき仕事をこなした上でなら、店以外も色々やっていいと思うので。来年は県内や近県の同業仲間に声をかけて“お菓子マルシェ”をやりたいと考えているところです。みんなSNSや共通の業者さんを介して繋がっていて仲が良いんですよ。それに、これからは僕だけでなく店のスタッフもどんどん外に出て、人と繋がったり刺激を受けてほしい。その方がモチベーションも上がるし、楽しんで働けると思うんですよね」

米沢の人は同業同士でも仲がよく、みんなが何かしらで繋がっているというのは、編集部も取材を通して強く感じていたことでした。これは何か理由はあるのでしょうか?

取材中もずっと笑顔が絶えない佐藤さん。笑顔の似合う人が作るお菓子ってそれだけで素敵だなあと、お話を聞きながらしみじみ思うのでした。

「道路が整備されて近隣の県からも行き来しやすくなったし、情報はSNSで簡単に届けられる。数年前に比べると格段に周囲と繋がりやすくなったというのは感じます。あとは米沢の人口8万人という規模も、何かを起こすのにちょうどいいんでしょうね」

若い人たちに愛され、彼らが希望を持って元気に活躍できる街。これからの米沢がいっそう楽しみになりました!


「梅花堂」
住所:米沢市本町3-1-18
tel. 0238-23-1964
instagram:@
baikado_1921

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