髪を切ったことに触れるのはOK?


2017年6月末に、Facebook上で、様々な職場での言動について「ハラスメントと感じるかどうか」の認識をアンケート調査した。有効回答数は563人。回答者の77%が女性、23%が男性。世代は64%が30代で、40代が17%、20代が16%、50代以上が残り3%程度。様々な項目の中で、最も意見が割れるのが、服装についてのコメントに対する認識だった。

まず、ミナミさんが受けたような毎日のようなファッションチェックはNGと認識する人が多い。

 

また、プライベートに結びつけることや「色気」などのセクシャルな言葉は避けるべきだと考える人が多い。

たとえば、「いつもパンツスーツの女性がスカートをはいてきた日に『今日デートなの?』」。

男性は41%が「絶対言っちゃダメ」、39%が「ちょっとグレーかも」。一方、女性のほうは「ちょっとグレーかも」が最多の43%で、次が「まぁ別にいいんじゃない」(32%)、「絶対言っちゃだめ」(24%)と続く(男女の有意差あり)。

言われる側の女性の反応が分かれている。選択肢以外の「その他」(グラフにはカウントせず)の回答をした人の自由記述コメントを見ると、プライベートへの踏み込まれ具合への感覚次第ということだろうか。

 

■その他のコメント

・「今日スカートなんだね」くらいの反応はありだけど、いきなりデートに結びつけるのは気持ち悪い(20代女性)

・スカートにコメントするのはともかく、デートと結びつけて想像するようなコメントがいやらしいしダサい(50代女性)

・言う相手との信頼関係や、彼氏の有無などによる(40代男性)

・普段から仲が良く清潔感のある人からなら可(20代女性)

一方、「髪型を変えた女性に対し『イメチェン? いいね』」。こちらは、女性の62%が「まぁ別にいいんじゃない」で、31%もが「むしろ積極的に言うべき!」と考えている。男性も「まぁ別にいいんじゃない」が58%、「むしろ積極的に言うべき!」も24%もいる(男女の有意差あり)。

 

■その他のコメント

・海外なら普通に褒めるところでは?(30代女性)

・言われる人による(30代女性)

・男がモテるか次第(30代男性)

服装や外見についてのコメントは、言い方と人間関係によっては、むしろコミュニケーションを円滑にするものと捉えられる側面がある。ただ、嫌だと思う人もいる。上司の「お前がエロくないからやる気出ない」発言がまかり通る不条理』で書いたように、関係性について一方的な自信を持つことは危険だ。

 

注意したいときはどうすべきか?


一方で、特に男性から見たときに、不適切と考えられる服装もあるかもしれない。こうしたときに指摘していいのか、どのように指摘するべきなのか悩む人は多いだろう。

たとえば、スカートが短すぎて目のやり場に困る女性に「もう少しTPO考えて」と伝えたいとき。アンケート回答者から寄せられた自由記述のコメントが参考になる。伝え方は難しいとは思うが、からかったり、プライベートに結び付けたりせずに、あくまでも仕事上の指導として伝えるのがよさそうだ。

 

■その他のコメント

・本当に職場にそぐわないのであれば、本人のためにも言うべき(30代女性)

・他の人がいないところで個人的に仕事上のアドバイスして言うかも。普段はいいけど、お客様の気が散ってしまうような場面のミニスカはNGよ、とか(40代女性)

・マネージャーとしての業務生活指導ならアリ(30代男性)

・他の人がいる場でからかうためにいうのか、マネジメントの一環として個別にフィードバックするのかで違うので(40代女性)

・状況次第。常識を著しく逸脱する服装であれば男女問わず指摘することはありえる(30代女性)

・同性であれば積極的に指摘すべき(40代女性)

・人事や風紀担当を通して伝える(30代男性)

 

ハラスメント第1位


女性らしくあれ、女性らしさを出しすぎるな……両極端のメッセージを受け取る女性たち。一方で周囲にとっては、誉めているつもりだったり、注意すべき点があると考えていたりと、すれ違いがちなのが服装や外見についての問題だ。

しかし、労働政策研究・研修機構の「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査結果」でセクハラ被害を受けた内容として回答が最も多いのは「容姿や年齢、身体的特徴 について話題にされた」(53.9%)である。

7月、米トランプ大統領が、フランス訪問時に仏マクロン大統領の妻ブリジットさんに対し、「とてもスタイルがいい」などと発言し、これが報道されるとSNS等で批判が集まっていた。

動画を見るとトランプ大統領が舐めるように上から下までブリジットさんを見ている点も問題と思われ、関係性や言い方、態度によっては本人も不快にならない可能性もある。

ただ、美人、スタイルがいいなどと誉めているつもりでも、仕事の内容で評価されたいと思っている女性ほど別の部分しか見てもらえていないと失望する側面もある。基本的に仕事の場で容姿についてのコメントは避けた方がいいというのが世界的潮流と言えるだろう。

中野円佳さんの関連記事:他人事ではない、「いじり」が「いじめ」より残酷なハラスメントになるとき

 

<著書紹介>
『「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?』

中野 円佳 著 880円(税別) 光文社

2000年代に総合職として入社し、その後出産をした一五人の女性(=「育休世代」と呼ぶ)に綿密なインタビューを実施。それぞれの環境やライフヒストリーの分析と、選択結果との関連を見ていく中で、予測外の展開にさまざまな思いを抱えて悩む女性たちの姿と、その至らしめた社会の構造を明らかにする。


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中野円佳/ジャーナリスト
1984年生まれ。東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。大企業の財務や経営、厚生労働政策を取材。育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に通い、同研究科に提出した修士論文をもとに2014年9月『「育休世代」のジレンマ』を出版。2015年4月より、株式会社チェンジウェーブを経て、フリージャーナリスト。厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。現在シンガポール在住、2児の母。女性のスピークアップを支援するカエルチカラ言語化塾、海外で子育てとキャリアを模索する海外×キャリア×ママサロンを運営。東京大学大学院教育学研究科博士課程。

 
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