昨年大好評をいただいた、プロが教える写真講座の第2弾! 今回はカメラマンの衛藤キヨコさんに、いい写真のために基本と応用、シチュエーション別のポイントを教えてもらいました。ちょっと意識するだけで見違える仕上がりに、写真がもっと楽しくなるコツが満載です!


<Q.1>スマホで撮るモノNo.1「食べ物」を美味しそうに撮るには?


A. 窓際などの明るい場所を探し、光の種類を1つに絞る

衛藤さんがインスタにアップされているおうちごはんの一枚。とっても美味しそう! 器の配置も参考になりますよね。もっと見たい方は「#朝昼兼用でございます」で検索してみてください♪

まずは普段から撮る機会も多い「ごはん」で、上手に撮る基本を教えてもらいました。上の写真は衛藤さんがご自宅で撮ったものですが、ここで一番大事なのは“光”なのだそう。
「写真を撮る時は明るければ明るいほどいい、と皆さん思いがちですが実はそうでもない。蛍光灯に間接照明など、いろんな種類の光が混ざっているほうが撮りにくいんです。窓際にセッティングすればほとんどの場合は光量も足りるはずなので、電気を消して自然光だけで撮ってみて。きっとそれだけで、びっくりするほど美味しそうに撮れますよ」
また俯瞰のアングルは、構図の取り方が分からない、という人におすすめ。斜めから撮るよりも構図が決まりやすいんだそうです!

【応用編1】光を反射させ、影をコントロールしてみる

左側からのみ光が当たっているもの。
右側に白い紙を置き、反対側からも光を当てたもの。ほかの照明は一切使わず、紙一枚でこれだけ変わるんです!

もう一つ上のレベルを目指したい人におすすめのテクニックがこちら。みなさん“レフ板”という言葉は聞いたことがありますよね。光を反射させる撮影用具の一つですが、白い紙や布でも同じ効果を出せるんです! 
「レフ板を光の反対側に置いてみてください。白いものならとりあえずなんでもOK。スチレンボード(ホームセンターやネットで購入可能)を2枚テープで貼り合わせて衝立のようにすると、自立してくれるので撮りやすいですよ。同じ光の話だと、たまに残念だなと思うのが、自分やスマホの影が写り込んでしまっている人。どんなに光や構図に気を配ってもこれでは台無し。自分の真上や背後に光源があるときは気をつけてください」

【応用編2】お店の料理を着席の状態で撮ってみる

プロに聞く!旅の写真を上手に撮るコツスライダー1_1
プロに聞く!旅の写真を上手に撮るコツスライダー1_2

おしぼりなど、ゴチャゴチャしがちなモノはなるべくどかしてみる。それが無理なら2枚目のようにめいっぱい寄ってみても。ふんわり上がる湯気が美味しそう!

自宅なら光のいい場所に移したりできるけれど、お店ではそうもいかないもの。構図も、着席した状態では斜めのアングルに固定されてしまいますよね。そんな状態でいい写真を撮るには? 「いろんなお皿が並んだテーブルを全体で写すと、結局何が撮りたかったのか分からない写真になりがち。こういう時は全体を撮ろうとせず、撮りたいものに絞ることが大事。写したくないものを外して要素を減らすか、一つの料理に寄って画面を埋めてしまうのも手です」

【応用編3】アプリの加工機能を使ってみる

スマホで撮影した写真。
インスタの「チルトシフト」を使ってぼかした写真。一回の加工でこれだけ雰囲気が変わるとは、見比べてみると凄いですよね。

「スマホアプリの加工機能はかなり進化しているのでぜひ使ってみてください。フル活用すればとてもいい仕上がりになるはず」と衛藤さん。雰囲気を変えたり手直ししたりと、一つ覚えるだけでも写真を撮る楽しみが広がりそうですね! そして、ごはんを撮るうえでは「とにかく短時間を心がけて」とも。
「熱い料理が冷めてしまったなど、美味しくなくなった料理は美味しそうには撮れません。いい写真を撮りたいばかりに何枚も粘っている人をたまに見かけますが、ベストの状態で食べられないくらいならいっそ撮らないほうがいいと思う(笑)。本末転倒にならないよう、そこだけは気をつけてくださいね」


<Q.2>美しい景色を上手に撮るには?


A. 必要ないものを入れず、絵をシンプルにする
 

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本来ある手前部分を切り取ることで、夕焼けと街並みという主役がはっきり。2枚目も、少しごちゃごちゃしていた下の部分を切ったことで、建物の曲線がより際だつ仕上がりに。

わーきれい! と思ってカメラを構えるものの、撮ってみるとイマイチ…という経験はないですか? 風景を撮る時にも、大切なのは“撮りたいものだけに絞ること”なのだとか。「きれいなものしかない景色というのは珍しいんです。だいたいは電柱や電線、大きな看板などあまり写ってほしくないものがあるので、いかにそれらを画面から省くかがポイント。そうすることで風景の美しさがより引き立ちます」

【応用編】ダイナミックさを出すには「広さ」がキーワード!

先日訪れた韓国・釜山の街並み。

風景を撮って「……アレ?」となるもう一つの原因は、自分が実際に見ている広さと、写真に納まっている範囲とのズレ。
「人が見えている範囲って、自分が思っているよりずっと広いんだと思います。だから、そのまま撮るだけではそっけなく感じやすい。目に映ったダイナミックさを写すには、立ち位置を後ろに下がるなどして、できるだけ広い範囲を写すようにしてみて。カメラの場合は広角レンズを使うのもいいですね。私はまだ使ったことがないですが、スマホに装着する広角レンズもたくさん出ているので、それらを使ってみるのも面白いと思いますよ」


<Q.3>雰囲気のある場所を上手く撮るには?


A. 全部を撮ろうとせず、その写真の“主役”を決める

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人々の頭上に枝を広げる大きな木を主役に。その場に流れるゆるやかな空気が伝わってきます。2枚目も写っているのはカウンターだけなのに、レトロで庶民的なお店の雰囲気がこれだけで十分わかりますよね。

その場所のいい感じな雰囲気を残そうとすると、なるべく全体を写そうとしてしまいませんか? でもそれは逆効果なのだとか。「例えば純喫茶なら飴色のテーブルとかその上のシュガーポットとか、彫刻の入った椅子の背もたれとか。その場所の何か象徴的なものを探して、それに焦点を当てて撮るほうが場の雰囲気は伝わりやすいかも。逆にいうと、店内を見渡すような広い構図でいい写真を撮るのって、プロにとっても難しいことが多いんですよ」


<Q.4>街のなんてことない風景をいい感じに撮るには?


A. 自分が“面白い”と思うものを探してみる

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「1枚目は犬の多い台湾だからこそ撮れたカット。2枚目は肉まんが片方に“踏まれてる”のがなんか可愛かったから(笑)。3枚目のソフトクリームの看板、これは私がずっと撮り溜めているモチーフ。何が面白いかは、あくまで自分の基準でいいんですよ」

これも、主役を据えるという点ではQ.3の答えと同じ。なんてことない風景を撮る時にも、その中でポイントとなるモノを必ず探しているのだとか。「お店の看板が可愛かったとか、咲いている花がきれいだったとか。そういう取っ掛かりが一つ見つけられれば、おのずと構図も決まってくるはずです」

【応用編】人が大勢がいる場所を上手に撮ってみる

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1枚目はトラがいい表情をしてくれるのを待って、2枚目は荷物を運んでいるお兄さんが顔を上げた瞬間を。「ターゲットがいい顔を見せてくれるまで、こういう時はとにかく待つしかないですね」

これまで出てきた“主役を決める”という法則を、人物に当てはめたのがこれ。「不特定多数の人がいても、必ずその中の誰かに照準を当てて、その人のタイミングを待ってシャッターを切る。そのほうが画面に動きが出てキャッチーになります。あとは画の中に人を詰めこみすぎないこと。ある程度空間が残っているほうがいい構図を取りやすいです」

【応用編】「余白」でいい感じの雰囲気を演出してみる

衛藤家の猫ちゃん。のーんびり寛いでいる様子がたまりませんね。このように余白を作る場合は、周りをできるだけシンプルにするのもポイント。

撮ることに慣れてきたらぜひ挑戦してほしいのが、構図で工夫してみること。「上の写真は、フェンスの影も入れたかったのでこの構図にしてみました。主役がつねに中央にいなければいけないわけではないので、画に動きをつけたり空気感を出したい時に、こういった構図もチャレンジしてみてください」。


<Q.5>人物のいい表情を引き出すには?


A. 撮りながら話しかける、自分も楽しそうにする

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「海外に行った際は、挨拶と“写真撮らせてください”という言葉も覚えます。2枚目は最近の中でも改心の一枚。めっちゃええ顔してるでしょ? 手にお金持ったままだけど(笑)」

一瞬を逃すまいとジーッと構えていると、ますます相手を緊張させてしまうばかり。話しかけるのは笑わせるというよりも、撮られていることからなるべく気をそらす、忘れさせるのが目的だそう。「表情が固くなってきちゃったな、と思ったら、一回カメラをおろして休憩するのもアリです。あと私はよく人から、撮る時いつも笑ってるよね、っていわれます(笑)。無意識だったけれど、たしかに険しい顔で『いい顔して〜』というのも無理な話。自分が楽しそうにしていることも大事かもしれませんね」


【番外編】キレイに撮ってもらうためのコツは?


A. 自然な笑顔が一番美しいです!


せっかくなら撮られるのも上手になりたい、ということで聞いてみました。写真写りにコツってありますか?
「形に残ると思うとつい澄まし顔をしたくなる、その気持ちは分かるけど、個人的にはナチュラルな笑顔のほうが、人としての美しさや清々しさを感じます。シワとか顔の輪郭とか、歯が見えるのがイヤとかそれぞれあるとは思いますがそこはもう気にしないで(笑)、アハハと声を出すくらいのつもりで笑ってみてください。」それこそミモレには、お手本になりそうな方がたくさん出ていますよね!

プロが教える写真講座の第2弾、いかがでしたか? いい写真とそうでない写真の違い、意外なものも多かったのではないでしょうか。写真をもっと撮ってみたくなった、そんなふうに思っていただけたら嬉しいです! 次回は「これを目当ての旅もいい、朝ごはんが美味しい宿」です。どうぞお楽しみに。

衛藤 キヨコ
雑誌やWEB、書籍などさまざまな媒体で活躍。著名人のポートレートから食、旅、インテリアなど幅広く手がける。写真を担当した書籍に『台湾の「いいもの」を持ち帰る』(青木由香・著、講談社)、『Heima これからの住まい支度』(石井佳苗・著、表紙ほか担当 宝島社)など。Instagram:etokiyoko

 
 
取材・文/山崎 恵 構成/川端里恵(編集部)
 

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