普段使っていない筋肉を鍛えることが必要


SNSに限らず私たちは、ついつい人と比べて安心したり落ち込んだり、ということをしてしまうもの。そんなふうに物事の背景や行間を読み取る体力は、どのようにしたら鍛えられるものなのでしょう?

「決して自分の仕事だからというわけではなくて、やはり長い文章を読むことは大事だと思うんですよ。小説でも評論でもエッセイでも、普通に読めば2、3日はかかるものですよね。それだけの時間をかけて一つの物語を知る、ということを日頃からおこなっていれば、“思考の長期化”が成されていくはず。本のほかに何時間かの映画や浄瑠璃やバレエを一人で見るのもいいと思います。長い作品に取り組むって手間がいりますけど、それをやらないと今後もっと苦しいことになるかもしれませんから」

 

とくに40代となると新しいことを経験する機会も減るだけに、思考もどんどん狭く短くなってしまいがち。そこで姫野さん自身は、「40代からこそ今までやったことがないことをやるべき」と考え、公文の算数教室に通い始めたのだそう!

「小さいとき算数が苦手だったので、もう一度きちんと取り組み直したいなと思ったんです。それで小学校1年のクラスから始めて、高校生のクラスまで続けました。だから最初は小学1年生に混じって、2+6は?とかからやるんですよ。たまに間違えたりすると、『わー、大人のくせに間違えてる!』とからかわれたりしながら(笑)。でも何回も同じ問題を解いて、少しずつ難しい算式にステップアップしていって、物事ってこうして身に付いていくんだなと感じた。その過程がすごく楽しかったので、子供の頃に近所に公文教室があれば良かったなと思ったほどでした。スポーツ選手がいろんな筋肉を鍛えることが必要なように、皆さんも今まで使ってなかった筋肉を鍛えるべく新しいことを始められてはいかがでしょう?」


優劣意識なんて所詮は個人的なもの


ここで突然姫野さんは、「それでもつい誰かと比べて負けたと感じてしまったときは、『ケネディが暗殺された日にテキサスで公開された映画も知らないくせに!』と思ったらいい」とおっしゃられました。その言葉の意味が分からず「??」と思っていると、次のような説明が。

「私は『フェイド TO ブラック』という映画が好きなんですけど、その中ですっごくダメダメな映画オタクの主人公が、自分をバカにしてきた同僚に、『『凶弾』はいつどこで封切られたと思う?ケネディ暗殺の日のテキサス劇場だ!そんな事もお前らは知らないんだろう!』と吐くシーンがあるんです。自分の中で優劣をつけたところで、人にとって価値のあるものは様々。ところ変われば勝っている人も負けているし、負けている人も勝っている。優越意識なんて所詮そんなものですから、気にするに値しないと思いますよ。何より棺桶に片足突っ込んでいるような年齢の私からすれば、もっと認知症とかがんとかいったことのほうが恐ろしい。優劣意識に振り回されるのってある意味、若い証。だから落ち込みそうになったら、『私って若いのね!』とポジティブに捉えてください!」

 

<著書紹介>
『彼女は頭が悪いから』

姫野 カオルコ 著 ¥1750(税別) 文藝春秋

横浜市内の平凡な家庭に育った神立美咲は、ややぽっちゃり体型で劣等感が強い女の子。そんな美咲にできた人生初の彼氏は、東京大学理科Ⅰ類の学生・竹内つばさだった。しかし二人がそれぞれに持つ格差意識が、とんでもない事件を引き起こすことに……。2016年に実際に起こった東大生による強制わいせつ事件をもとに、誰もが持つ本質的な闇を浮き彫りにした衝撃的な作品。ぜひご一読を!

<ミモレ「バタやんのインスタ読書会」第2弾 開催決定!>
編集部ブログにておすすめ本をいつも紹介しているバタやんのインスタ読書会がついに実現!
読書会 第2弾のお題はこちらの『彼女は頭が悪いから』です。

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取材・文/山本奈緒子
構成/柳田啓輔(編集部)

姫野カオルコさんインタビュー 前編はこちら>>

 
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