結婚までは仲良しで、「きっと彼となら楽しい家庭を築けるはず」と思って結婚したのに、出産、子育てを経て結婚生活が長くなるにつれ、気持ちはすれ違っていく一方。「なんで私の苦労を夫はわかってくれないの?」「家事も子育ても全く協力してくれない」と不満が積み重なり、「恋人から家族になっちゃったんだからしょうがない」と気持ちを切り替える人もいれば、「もう耐えられない」と離婚を選択する人もいます。妻と夫はそんなに分かりあえないものなのでしょうか? 夫婦の間に横たわる、深くて暗〜い“溝”について考えてみましょう。
 

夫からの離婚理由2位が
「妻の精神的虐待」という衝撃の事実!


好きあって結婚したはずなのに、結婚年数が長くなり、特に出産や子育てを経験すると、夫の無理解や非協力ぶりばかりが目につくようになった――。なんてことはありませんか?

そんな状況を夫の側から見てみると、驚くことに「妻が怖い」というのです。夫側から申し立てた離婚の動機に、近年、急上昇している理由があります。それは、「妻からの精神的虐待」というもの。2017年度司法統計によると、2000年度の6位から2位に躍り出ています。

精神的虐待というと穏やかではありませんが、「妻がいつもイライラしている」「何をしても怒られる」「口調がキツイ」「人格を否定するような言葉をぶつけてくる」「急に怒り出す」といった妻の言動を指すとのこと。妻の立場であるあなたにも思い当たるところはあるのでは?

脳科学コメンテイター・感性アナリストの黒川伊保子さんの新刊『妻のトリセツ』では、脳科学の立場から女性脳の仕組みを前提に妻の不機嫌や怒りの理由を解説し、夫側からの対策をまとめた“妻の取扱説明書”。夫向けに書かれた本ではあるものの、逆に妻がこれを読むことで、夫の言動がどうしていつも的外れで、自分を理解してくれないかがわかる内容なのです。


脳裏に一気に蘇る夫への不満は、
子どもを守るための女性脳のしわざだった


夫との何気ない会話がきっかけで、過去、夫に対してイラっとした発言がぶわっと吹き出してきて抑えきれなくなり、怒りをぶつけてしまったという経験はありませんか?

 

実はこれ、女性脳の特徴のひとつというのです。女性は感情に伴う記憶を長期にわたって保存し、それを後になって「みずみずしく取り出す」ことが得意。例えば、「怖い」「辛い」「ひどい」「無神経」といった嫌な感情(ネガティブトリガー)もあれば、「うれしい」「おいしい」「たのしい」といういい思い(ポジティブトリガー)もあります。こうした“感情の色合い”と同系統のものが、それぞれ数珠つなぎに収納されているというのです。そのため、夫に「無神経」なことを言われた時に、「つわりがひどくてふらふらだった時の私に、あなたはなんて言ったか覚えてる?」なんて、10年以上も前の出来事が、生々しく蘇ってきたりするわけです。

しかし、男性脳にはそういう機能は備わっていないために、「なんでいま、妊娠中の時の話が出てくるの?」と理不尽極まりない思いにさいなまれ、口論が発展してしまうというのです。

この数珠つなぎの記憶は、どういうところに生かされているのでしょうか? 実は、女性脳が子育てのために備えている標準装備。人類は一個体が残せる子どもの数が少ないため、子育てでは常に「新しい問題」に直面します。それを何百世代にもわたって培ってきた女性脳には、いつからか「新たな命題に対して、人生の記憶を総動員して瞬時に答えを出す機能」を備えるようになったと考えられています。

たとえば、夜中に子どもが高熱を出した時のこと。「熱が高いのに、顔が青ざめている。これはいつもと違う。救急車を呼ぶべきか……」と、女性はこれまでの発熱シーンを思い返して、現在の状況を確認し、目の前で置きていることにどう対処すべきかを、即座に判断するのです。

また、自らの身を守らないと子どもが無事に育てられないため、危険回避のためにネガティブトリガーのほうが発動しやすい傾向にあります。だからこそ、「あの時はとても楽しかったね!」といった幸せな思い出話よりも、「なんであの時あんなひどいことを言ったの?」という負の感情の方が出やすいとのこと。

 


女性の側もこうした脳の働きを理解しておけば、過去の嫌だった経験を総動員して夫に対して怒りをぶつける前に、ワンクッション置けるようになるのではないでしょうか?

 

<著書紹介>
『妻のトリセツ』


黒川 伊保子 著 800円(税別) 講談社

理不尽な妻との上手な付き合い方とは。
女性脳の仕組みを知って戦略を立てよう!

 

妻が怖いという夫が増えている。ひとこと言えば10倍返し。ついでに10年前のことまで蒸し返す。いつも不機嫌で、理由もなく突然怒り出す。人格を否定するような言葉をぶつけてくる。夫は怒りの弾丸に撃たれつづけ、抗う気さえ失ってしまう。
夫からすれば甚だ危険で、理不尽な妻の怒りだが、実はこれ、夫とのきずなを求める気持ちの強さゆえなのである(俄には信じ難いが)。本書は、脳科学の立場から女性脳の仕組みを前提に妻の不機嫌や怒りの理由を解説し、夫側からの対策をまとめた、妻の取扱説明書である。
「妻が怖い」「妻の顔色ばかりうかがってしまう」「妻から逃げたい」という世の夫たちが、家庭に平穏を取り戻すために必読の一冊でもある。



脳科学専門家 黒川 伊保子
長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科を卒業。富士通ソーシアルサイエンスラボラトリで人工知能の研究に従事したのち、株式会社感性リサーチを設立。世界初の語感分析法を開発し、多くの商品名やマーケティング戦略を手がけ大ヒットに導く。また、人間の思考や行動をユーモラスに語る筆致によりベストセラーも多く、特に『英雄の書』『女は覚悟を決めなさい』『母脳』(ともにポプラ社)の「英雄三部作」は、脳科学をもとに人生を切り開く方法をわかりやすく説くことで多くの世代から大反響を得ている。近著に『前向きに生きるなんてばかばかしい』(マガジンハウス)、『英雄の書』を文体から変え、加筆修正した『英雄の書 すべての失敗は脳を成長させる』(ポプラ新書)。