オーガニックコットンのウエアを着るようになってからすっかりからだが変わってきた私も「どうしてオーガニックコットンがいいのか」ということが、だんだん後付けでわかってきました。そこには私たちの倫理観を問うような、見えない事実がたくさん潜んでいて、初めて見て知ったこと、学んだことがたくさんあります。


ナチュラルなコットン、実際は超ケミカル?


私はナチュラルな素材=コットンだと思って生きてきました。天然素材といえばコットンですよね。しかし綿花の栽培には大量の農薬が使われます。毎年、収穫の時期になると枯葉剤を散布しています。アメリカではヘリで散布し、畑は立ち入り禁止に。インドなどではお父さんが裸でタンクをしょって畑に散布することも。枯葉剤は発がん性の高い劇薬です。お父さんの健康被害、動物への影響、輪作をしていくことでの砂漠化、数々の危険が潜んでいます。綿花は作物の中でも断トツに農薬の使用量が多いため、農薬を買うお金がなく、自殺をする農家さんや、機械の代わりに子供の労働で賄うために、人身売買が行われています。収穫時に、枯葉剤を吸い込んだ子供がどうなるのか。劇薬がついた手を放置していたらどうなるのか。さらに枯葉剤を散布した綿花を収穫し、脱脂し、糸にして、織って、染色やプリントを施し、縫製をして、ボタンやファスナーをつけ、タグをつけて袋に入れて、流通をして私たちの元に届きます。このはてしない工程を経たものが、すごく安いということは、どこかの工程に負荷がかかっているから。最近の新聞記事にも、インドの縫製工場で救った子供が、1日長時間、換気のできない地下の部屋で何年も働いていて、外に連れ出したらまぶしくて太陽も見られず、走ることもできなかった、と書いてありました。いま現在行われている現実です。「あれ? コットンって全然ナチュラルじゃない」と思ったのが私の印象。対してオーガニックコットンは、枯葉剤を使わずに、落葉を待ち収穫し、優しく脱脂され、毛羽を生かしながら糸にし(毛羽は織るときに機械に引っかかりやすいので生産量が落ちる)丁寧に織られ、生地になります。生産背景も、縫製の背景も、倫理観の元に管理されているものが多い。優しさが詰まった素材だと感じました。

 

これからの時代、大切なのは自分の価値観


遺伝子組み換えではない種の研究から、防虫剤を使用せずに、女性ホルモンと似た成分を入れたポットをつけてオスをおびき寄せ、交配を防ぐことで虫を減らす仕組み、収穫したコットンが通常のコットンとまぜられないように管理するなど、オーガニックコットンを守るためには果てしない努力が必要です。さらに労働条件、出荷先、いろんなことをチェックしないといけないわけですから、気が遠くなる作業です。それを世界中の、地球の環境や子供の未来を考えて働く人々が人種も国境も超えて支えています。

習慣になっているものの選び方、いつも使っているもの、そんな身近なものの背景にも、興味を持ってみると、世界が広がります。


疲れをとるために眠る時間、私ならこうして大切に作られたオーガニックコットンを着たいな、と思います。優しい工程を経ているから、余計に気持ちいいのかな。だから眠りが深くなるだけではなく、自分が満たされたりチャージできたりするのかな、なんて思ってしまいます。どうせものを買う、選ぶなら、私は心地よいもの、正しく作られたものを選びたいと思っています。もし選べるなら、オーガニックコットンを買う。野菜もできるだけ路地ものを買う、オーガニックを買う、お味噌は杉樽で熟成されたもの、醤油も本醸造を買う、などすぐに自分ができるアクションです。身の回りのものや、自分が食べるものにちょっと興味を持つと、そのストーリーが見えてきます。これからは、そんな自分が納得できるものを手にすることが大切なのかもしれません。