写真:Mondadori Photo/アフロ

なぜ神は人間にSNSなんてものを与えてしまったのでしょうかと思うときがあります。

しなくてもいい自慢、自虐に見せかけた自慢、愚痴に見せかけた自慢、有益な生活情報に見せかけた自慢……SNSがなければ心の中にそっと仕舞えていたものを、パンドラの箱を開くように一気にダダ漏れさせてしまう、あな恐ろしやSNS。

さて、ここ何年かでジャニーズに色々ありまして、永遠に続くと思っていたSMAPが解散して、その重い扉はついに開かれました。そう、人気絶頂時のキムタクと結婚し二子をもうけた「鋼鉄の前髪」こと工藤静香。ここに来て、十数年ため込んでいた「あたしが、工藤」(※デビューシングル『禁断のテレパシー』のキャッチコピー)が大爆発。星一個破壊できるくらいの大爆発を起こしております。

さぞかし言いたかったことでしょう。あらん限りの文化資源をかけた二人の子どもは美しく育ち、なんやかんや言われながらもキムタク兄さんはスター性を維持している。そこにはあたし、工藤の並々ならぬ努力があったはず。豊かな生活あるある早く言いたい。「MUGO・ん」じゃなくて早く言いたい。

なんつうか工藤のしーちゃんのインスタには、写真ひとつ、コメントひとつにいたるまで、熟成というか発酵というか、漂ってるんですよね。そこいらのママタレどもとはもう気合いが違う。ナチュラルの向こう側にいってしまったライティング、全粒粉と豆と謎のスパイスを多用する家庭料理、自宅の庭で栽培してるというフォルムが独特の植物、呪術感溢れるパワーストーンアクセ、唐突に出てくるシャネル、ブルガリ、アレキサンダーマックイーン、そして飯島直子。 自身の「豊かな生活」を一味違うやり方で伝えようとする余り、結果最も望んではいないであろう「重ための叶姉妹」になってしまっているところも含めての、圧倒的やり過ぎ感。

そんな「あたしが、工藤」エクスプロージョンをさらに拡大させているのは、次女Koki,のモデルデビューでしょう。今年5月に『ELLE JAPON』、さらに日本初&歴代最年少でブルガリアンバサダーに就任するなど、2018年の二世芸能界を席巻したKoki,。その傍らにどうしようもなく静香の圧を感じるのです。自分が苦労して手に入れた豊かな生活の、その最も有能なスポークスマンなわけですよ、Koki,は。Koki,のプライベートな投稿にはいいねしても、仕事関連にはスルーを決め込んだり、すごく分かりづらい「見守る母」を演じる静香ですが、その仕分け自体がもう「あたしを見て」でゾクゾクしちゃう。「匂わせ彼女」ならぬ「匂わせ静香」です。

先日話題となりましたキムタク父さんとKoki,のシルエット写真、あれ絶対、しーちゃんが一番やりたかったやつじゃないでしょうか。ジャニーズ屈指のスターである夫とのツーショット。あの写真を見たとき、グッときましたもん。おそらく撮影者であろう工藤静香の情念、娘のシルエットに自分を重ねたんだろうなって思って。ちなみにこの投稿に、静香は「いいね」せず。も〜〜いいよ〜〜大丈夫だよ〜〜 みんなわかってっから〜〜。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Kōki,さん(@kokiofficial_0205)がシェアした投稿 -

 

今までもたくさんのママタレたちがあの手この手で芸能界を渡り歩いてきました。胸の谷間一つでのし上がってきたグラドルが出産を境に急に「表に出る人間として、女性の味方でありたい」と言い出したり、ほぼほぼメガネのイメージしかなかった女性芸人に急に「子育て、しんどいよな」と語りかけられたり、まぁMEGUMIとくわばたりえですけどね。

経歴をうまいことロンダリングしながら駆け上がるのがママタレすごろく。元うしろ髪ひかれ隊からの現キムタク嫁というのは出世なのかどうかよく分からないですけど、でも間違いなく工藤静香は、その戦略的思考、表現方法、類まれなキャラ、全てにおいて日本のキングオブママタレだと思います。元モー娘。辻ちゃんと双璧を成す、ママタレ界の横綱です。ミポリンみたいなこじらせ方しなくて、本当によかったと思いました。

 

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。