でも、数が少なくなった分、自分がどんな服を持っているかをしっかり把握できるため、お店で「いいな」と思った服があっても、手持ちの服と組み合わせて使えるかがしっかり判断でき、勢いや「セールで安いから」という理由で服を買うことはなくなったそう。

工夫して着こなす楽しさにも目覚め、改めて「私はファッションが好き!」と実感できるようになったというのです。本当にお気に入りの服だけが揃うクローゼットには、松尾さんならではの工夫が随所に光っています。

いつも好きな服を着て活躍させたいから
部屋着はなし


松尾さんのアトリエ兼自室にあるクローゼットは、上下2段になっており、上段にはポールがあり、服を吊るせるようになっています。下段はスーツケースなどの大きなものを収納するスペースとして活用しています。上段がすっきりしているのは服の数が厳選されていえるだけではありません。ハンガーが統一されているのですっきりして見えます。

 

「ハンガーはドイツ製のMAWAハンガーで統一しています。友人に教えてもらったもので、表面に特殊な加工が施されているので、服が滑り落ちないのが特徴。つるつるとした素材の服や、キャミソールでも大丈夫。スリムなので場所を取らないのも長所。もちろん見た目的な統一感もいいところです」

ハンガーがバラバラだったり、クリーニング屋さんのプラスチックハンガーをそのまま使っていたりする人も多いのでは? ハンガーをまとめ買いするという“投資”は必要ですが、いいハンガーであれば長く使えるものですし、さまざまなメリットがあるので、十分元は取れそうです。

松尾さんのクローゼットにはコートやストール類がありません。これらは玄関の収納棚が定位置。外出する時に身につけるものなので、動線的にも玄関にあった方がいいと思ったからです。

「家を出る時に、ファッションにアクセントがほしい時や、肌寒いと感じた時に、ストールやスカーフをさっと取り出して首に巻いたり、バッグに入れて持ち歩いたりできるので、とても便利ですよ」

ところで、松尾さんは「部屋着」を持っていないそう。その理由を聞いてみました。

「以前は、家の中ではファストファッションのデニムをはいて、お出かけ用には好きなブランドのデニムを、と考えていたのですが、そのデニムをはく機会はほとんどありませんでした。私はアトリエにこもって絵を描くことが多く、“お出かけ”の機会自体が少なかったんです」

 

せっかく気に入って買ったデニムのはずなのに肝心の出番がなく、クローゼットにしまいっぱなしであることに、次第に「もやもや」するようになった松尾さん。そこで思い切って、家の中でも大好きな服を着て、楽しい気分で過ごしたほうがいいんじゃないかと考え方を変えたというのです。

「確かにお気に入りの服を家で頻繁に着ると、傷みも早いです。でもずっとクローゼットに入れたままで着ないでいる方が嫌だし、大切にしたい気持ちもあるけど、ずっと着ない方がもったいないし、服もかわいそうと感じるようになりました」

部屋着のままだと、ちょっとでかけたい時にわざわざ着替えるという手間がかかります。でも、家でも外出できる装いであれば、すぐに出かけられるというメリットがあることにも気づいた松尾さん。

「メイクさえすればすぐに出られるので、前より気の赴くままに外出しやすくなりましたね」

ファッションが大好きであれば、好きな服をたくさん着て、服に負担がかからないように収納しておきたいはず。松尾さんのクローゼット整理術や、服に対するスタンスには、たくさんのヒントが詰まっていました。

 

<著書紹介>
『部屋が片づかない、家事が回らない、人間関係がうまくいかない 暮らしの「もやもや」整理術』

松尾たいこ 著 1400円(税別) 扶桑社

人間関係、仕事、家事など、毎日の暮らしのなかで感じる「もやもや」した感情。これは嫌なことを我慢していたり、抱え込んで、暮らしが滞っているサイン。この「もやもや」という感情を見逃さず、ひとつずつ原因を解消していくことで、確実に生きるのがラクになります!
「八方美人にならなくていい」「仕事は全部自分でやろうとしない」「苦手な家事はハードルを下げる」など、
アーティスト・イラストレーターの松尾たいこさんが、「もやもや」した感情を減らすためにたどり着いた、人づき合いのコツ、SNSとのつきあい方、家事の減らし方、ものの選び方、整え方を紹介。
これからの人生を心地よく生きるためのヒントが満載です。

アーティスト/イラストレーター 松尾たいこ

広島県生まれ。短大卒業後、約10年の自動車メーカー勤務を経て、32歳だった1995年に上京。セツ・モードセミナーに入学し、98年よりフリーのイラストレーターに。 書籍の装画やCDジャケット、大手企業広告などに作品を提供。ファッションにも造形が広く、幅広い年齢層の女性に人気がある。夫はITジャーナリストの佐々木俊尚。近著に『35歳からわたしが輝くために捨てるもの』(かんき出版)、『クローゼットがはちきれそうなのに着る服がない! そんな私が、1年間洋服を買わないチャレンジをしてわかったこと』(扶桑社)など。

 
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