以下の題材で、授業の指導案を創りなさい。

奈義町内の幼稚園で、親子で参加できる食育をテーマにした特別授業を行うことになりました。
その指導案を考えてください。
授業の時間は、100分を想定してください。
対象は5歳児(年長組)です。
園児数は20名です。

・奈義町の特質をできるだけ生かしたものにしてください。
・親子で参加できるものにしてください。

最後に、10分程度でプレゼンをしていただきます。
幼稚園の園長先生や、教育長さんに向けてのプレゼンだと想定してください。
プレゼンの際は、全員が何らかの役割を果たして説明をするようにしてください。
時間配分や役割分担を、しっかり考えてください。
プレゼンの時間は8分から12分としてください。


あるいは、建築系の受験者がいることが分かっていた年は、以下のような問題を設定した。


〈課題〉
いま、奈義町では幼稚園、保育園を統廃合する計画が進んでいます。
どのような施設が望ましいかを議論し、ホワイトボードに簡単な設計図面を書いてください。

最後に、その図面を元にプレゼンテーションを行ってもらいます。

以下が条件です。
敷地は4000平米。町のほぼ中心に、新たに建設の予定です。
予算は、比較的潤沢にあります。

・奈義町の特質をできるだけ生かしたものにしてください。
・どのくらいの人数を収容しなければならないかなど、町勢データを調べて、根拠のある設計としてください。

最後に、10分程度でプレゼンをしていただきます。
町長や教育長、そして入園を考えている保護者の皆さんに向けてのプレゼンだと想定してください。
プレゼンの際は、全員が何らかの役割を果たして説明をするようにしてください。
時間配分や役割分担を、しっかり考えてください。
プレゼンの時間は8分から12分としてください。

 

これらはいずれも、一般職員と専門職員が協働しなければうまく進まない課題になっている。こういった問題を出せるのは、小さな町役場の強みであり、また大学入試とも大きく異なる点だ。

この奈義町の職員採用試験では、試験官に必ず若い女性の職員を入れることになっている。私が提案したのは、「能力を見る試験から働く仲間を選ぶ試験に変えていこう」という点だった。

奈義町の職員は80名である。どんなにそれまでの学業成績の優秀な人でも、冬になれば雪かきをしなければならないし、認知症のおばあちゃんを担いで病院に行くこともあるかもしれない。

東京都職員の定数総計は16万人余だそうだ。それほどの人数がいれば、能力に応じた適材適所でやっていけるのだろう。しかし地方の小さな自治体はそうはいかない。公務員は複数のポジションがこなせて当たり前だし、今後はさらにその要求が強まるだろう。

80人しか職員がいないということは、入所早々、80分の一のクルー(=仲間)になるということだ。小さな町だから職場の異動といっても限られている。「あいつはちょっと面倒だから窓際に」などとは言っていられない。

一方で、いまはどんな地方の公務員試験でも、受験者は公務員用の予備校に通い、十全に準備を重ねて受験をしてくる。

奈義町の職員採用試験は、四国学院大学などの試験と同様に午前中にグループワークを行い、午後に面接をする。午前中の作業についての質問も出るので、準備がしづらい面接になる。少しでも、受験者の素顔を垣間見ることができる。

さて、この奈義町は2014年、合計特殊出生率2.81(全国平均1.42)という驚異の数字を記録して話題となった。一過性の数字ではなく、ここ数年は、毎年2.5近くで推移しており、このままいけば人口減少に歯止めがかかるのではないかと期待されている。

からくりは意外と単純だ。隣の津山市(人口約10万人)で働く若い夫婦が奈義町に移り住み、多くの子どもを産むようになった。

東京に働く者は職場の沿線を選んで住む。しかし地方、とりわけ岡山県北などは車社会だから、移動時間が30分圏内ならば、どこに暮らしても大差はない。

結婚、出産、子育て、あるいは家を建てるときなどに、若い夫婦はどこに住むかを真剣に考える。その際、現状、子育ての大半を担っている女性の意見が重視されるだろう。当然、彼女らは、子育てのしやすい環境を選ぶ。奈義町は高校までの医療費無償など、子育て支援が充実している。こうして奈義町に若者人口が流入し出生率を引き上げる結果になった。

奈義町の子育て支援は、取り立てて目玉の施策があるわけではない。「他の町がやっているいいことは、それを最高水準で行う」というのが町の方針で、出産のお祝い金なども含めて様々な施策を充実させている。

しかし何よりも重要なのは、町ぐるみで子育てを応援していこうという雰囲気作りだ。「なぎチャイルドホーム」という子育て支援施設には、毎日たくさんのお母さんたちが子どもを連れて集まり、情報交換や相互扶助を行っている。ここでは、様々な形での子育てに関するサポートが行われ、所得や、保育園/幼稚園に預けているか否かにかかわらず、安心して子どもを育てられる環境が保証されている。

ただ、奈義町の秘密はこれだけではない。この町は長年、横仙歌舞伎という農村歌舞伎を守り続け、こども歌舞伎も毎年開催している。小学校三年生は全員、学校の授業で歌舞伎を体験する。さらに希望すれば、幼稚園児から高校生まで、無料で歌舞伎教室か太鼓教室に参加することができる。たった80人の町役場の職員のなかに、歌舞伎専門職員を二人置いて、この事業に専従させている。この二人は、普段は公民館の貸出業務のような仕事もするのだが、シーズンになれば歌舞伎に専念できるし松竹に研修にも出かける。

またこの町には磯崎新氏設計の素晴らしい現代美術館と図書館もある。町全体が、子どものなかに身体的文化資本が蓄積しやすいような環境となっているのだ。

(つづく)

 
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