19

1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた

0

なかなか他人には相談しにくい、性にまつわる悩み。病院に行くほどでもないし、ネットで検索してもなかなか信頼できる答えも見つからない。
そこで寄せられたお悩みを専門家や医師に、答えてもらいました。
 

Q. 女性ホルモン補充療法をはじめて1年経ちます。ホットフラッシュ、関節痛はだいぶ改善されました。当初、骨密度低下も検査で指摘されていましたが、今は標準になりました。このままずっと女性ホルモン補充療法を続けていきたいと思っていますが、医師からは「症状が治まっているのなら、一旦やめて様子をみましょう」と言われています。がん検診などはきちんと受けています。病院を変えるべきでしょうか?


(49歳・女性)

 


女性泌尿器科専門医・関口由紀先生の回答

A. 続ける、辞める。どちらにもメリットとデメリットがあります。
説明を受けて自分の意志で決められる医療機関を探すべきでしょう。


女性ホルモン補充療法については、2007年の大規模な研究で、血液凝固が進み血栓症が多くなるというリスクの報告がありました。そのため、一旦60歳以上の女性には補充しないという流れになったのです。しかし、最近では適切な管理のもとに女性ホルモン補充を継続しても問題ないと言われています。ご相談者の方が、現在も年に1度の、乳がん・子宮がん検診を受けているのであればより安心です。

 


女性ホルモン補充を続ける場合は血栓ができないよう、日常生活でちょっと気をつけることが大切です。年を取れば誰でも血栓はできやすくなりますので、意識するに越したことはありません。いわゆる血液をサラサラに保つには、EPAやDHAを摂取しましょう。青魚の油に多く含まれる必須脂肪酸です。そして、脱水症にならないよう1日1.5ℓ〜2ℓくらいを目安に水分を意識して補給しましょう。

このように生活習慣に気をつけながら、女性ホルモン補充を一生続けるのもひとつの選択です。骨・皮膚・外陰部の健康維持には、女性ホルモン補充は、圧倒的な強みがあります。一方60歳前後でやめて、漢方や食生活で大豆や山芋などをより積極的に食べるようにするのもありです。どちらを選択するかは、あくまでもご自身の意志。自分の遺伝的な傾向(母・祖母の高齢期がどのようだったか)も考えて、メリット、デメリットの提示を受けた上で、ご自身の意志で治療を決められる病院に変えたほうがよいかと思います。確かに、日本のドクターはホルモン補充療法に消極的な方が大半なのが現状ですが……。

最近は、年齢に関係なく、強いストレスによる女性ホルモン低下によってGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)に悩む方が増えてきます。デリケートゾーンの不快感・尿のトラブル・セックスの時の痛みが症状です。気になる方は、早めに女性ホルモン補充を検討するべきです。全身投与に抵抗がある方は、局所投与という選択肢もあります。

関口 由紀(せきぐちゆき)

日本では数少ない女性泌尿器科専門医。「女性の身体は、全身的に診ていく必要がある」と、婦人科、女性泌尿器科、内科、漢方内科、乳腺科、皮膚科、美容皮膚科、などを揃えた女性医療クリニックLUNAグループを横浜と大阪に展開中。 『女性医療クリニックLUNA(横浜元町)』は、2018年9月にリニューアルオープン。心身の悩みを抱える女性の相談窓口として、わかりやすさを重視。フロアごとに生殖年齢と更年期以降とに外来が分けられている。2F:女性医療クリニックLUNA横浜元町は生殖年齢女性向けの健康管理中心。3F:女性医療クリニックLUNA ネクストステージは更年期以後の女性の美と健康をサポートする攻めの抗加齢医療を行っている。


取材・文/熊本美加
構成/片岡千晶(編集部)


「オトナのための性教育」記事一覧
▼右にスワイプしてください▼

第1回「宋美玄先生と考える「私たち、もっとセックスするべきですか?」」>>
第2回「更年期以降をすこやかに送るために、「自前」にこだわるよりも大切なこと」>>
第3回「マスターベーションを教えられる親子関係をめざして」>>
第4回「デリケートゾーンの新習慣! おすすめケアアイテムをピックアップ」>>
第5回「セックスの価値観をリセット①「挿入主義から解放されよう」」>>
第6回「セックスの価値観をリセット②「セックスレスの原因と対策」」>>
第7回「セックスの価値観をリセット③「自分の性欲と向き合うことの意義は?」」>>
第8回「10代の性の現状と学校の性教育〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第9回「家庭でできる性教育ってどんなこと? 〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第10回「性教育は性の幸福感も語れる多様性を〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第11回「50歳で見つけた自撮りヌードの道 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第12回「性欲との向き合い方に正解はない 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第13回「夫婦のセックスレス問題、妻側のリアルな本音【30〜40代読者座談会】」>>
第14回「「コンドームは最低の避妊具⁉︎」驚きの避妊最新事情」>>
第15回「緊急避妊薬の市販化どうなる?中絶件数は年間約16万件で求める悲痛な声」>>
第16回「「熟年世代の性の実態」を東大名誉教授がレポート」>>
第17回「産婦人科医とAV男優が考えた「学校ではできない本当に必要な性教育」とは?」>>
第18回「【正しいマスターベーションのやり方】を子供に教えるには?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第19回「1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第20回「久々の性行為で痛みと出血が。もう性行為はできないの?」>>
第21回「夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情」>>
第22回「恋も性も人生もこじらせているあなたへ、読むべき“恋愛指南書”」>>
第23回「男性風俗とは違う「癒しのサービス」女性向け風俗の現状とニーズ」>>
第24回「【その時、緊急避妊薬が必要だった理由】服用当事者たちの声」>>
第25回「 日本初!セクシュアルアイテムブランドが百貨店にオープンした理由と反響 」>>
第26回「むなしい性交が5割…データでみる40、50代の性のリアル【夫婦間レス4つの事情】」>>
第27回「“常に女性が受け身”がセックスレスを生む。まずは、自分の身体を理解することから」>>
第28回「SNSで話題! 学校の保健の先生が「コンドームソムリエ」になったワケ」>>
第29回「セックスレス解消に効果大。夫婦にぴったりの3つのマッサージ」>>
第30回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【ブラジリアンワックス体験リポート】」>>
第31回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【レーザー脱毛の不安、疑問点を解消します】」>>
第32回「男性がセックスを断る理由「母親に思えて無理」の 裏の本音」>>
第33回「【データでみる不倫の実態】善悪を裁くことはできる?婚外性交をする理由」>>
第34回「男性更年期、女性も知っておきたい3つの症状と対処法」>>
第35回「オーガズムが女性の心と身体の健康に大切な理由【産婦人科医が解説】」>>
第36回「性教育は「セックスを学ぶこと」ではない【大人も学びたい性教育&ジェンダー論】」>>
第37回「​家庭でできる性教育「隠れたカリキュラム」とは?」>>
第38回「​【デリケートゾーンのケアの常識】お手入れは女性の新生活習慣に」>>
第39回「​【デリケートゾーンのケアの常識】これだけは実践したい4つの基本ポイント」>>
第40回「【デリケートゾーンのケアの常識】40代からは膣ケアがトラブル解消に」>>
第41回「【デリケートゾーンのケアの常識】人に言えない、女性器コンプレックスの治療法」>>
第42回「​『夫のHがイヤだった。』夫婦でこの本を読めますか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第43回「『夫のHがイヤだった。』セックスは「夫婦の条件」なのか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第44回「『夫のHがイヤだった。』豊かなセックスをかなえるものとは?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第45回「わが家の性教育は手遅れ?! 焦った時の頼れる情報サイトがオープン」>>
第46回「日本人のセックスの平均「性交時間は約30分」医師が分析する深刻な男女の溝」>>
第47回「2020年夫婦のセックスレスは5割以上。日本人が性交したくない理由とは?」>>
第48回「​セックスの悩みを助長する「誤解だらけの性知識」」>>