2018-2019年シーズン・グランプリシリーズロシア大会(ロステレコム杯)のフリースケーティング。写真:アフロ

昨年、38年におよぶフィギュアスケートへの愛と観戦歴のすべてを詰め込んだ著書『羽生結弦は助走をしない』が6万部ごえのベストセラーになったエッセイスト・高山真さん。その愛とマニアックな視点でフィギュアファンの心を奪った高山さんは、今年も待望の新刊を発売したばかり。ミモレ読者のために魅惑の扉を開いてくれました。
 

フィギュアスケート観戦は、おしゃれに似ている


ミモレ読者の皆様、はじめまして。高山真と申します。2月15日に、私なりのフィギュアスケートの見方を解説する、『羽生結弦は捧げていく』(集英社新書)という本を刊行しました。昨年に出した『羽生結弦は助走をしない』に続き、フィギュアスケートに関する本を出すのは2度目になります。
ウィンタースポーツの華、フィギュアスケート。みなさんはテレビでフィギュアスケートの試合がオンエアされていたら、選手たちの「どこに」注目していますか?
高く鮮やかなジャンプ? こちらまで目が回ってしまいそうだけれど、とても美しいスピン? それとも、バレエやミュージカルの舞台を見ているかのような、音楽とマッチしたドラマティックな動きそのもの?
あなたが見ている部分は、どれも「正解」です。

ミモレ読者の皆様に、フィギュアスケートの魅力を一言で表現するなら……、と、このところずっと考えていました。そして浮かんだのが、
「フィギュアスケート観戦は、おしゃれに似ている」

ということでした。

私たちひとりひとり、それぞれに「好みの洋服」「好きなスタイル」があります。このミモレでもファッションに対する提案や提言がたくさんなされていますが、それらは決してみなさんの好みを否定するものではない、と私はミモレの記事を読みながら感じていました。
みなさんの好みをA、ミモレからの提案をBとするなら、
「AよりBのほうが正しい」
ということでは、決してない。
「AにBがスパイスとして入り込むことで、ちょっと新しい『A+』が生まれる。AよりA+のほうが、さらにあなたの個性を際立たせるし、A+が加わることで、日々の生活にさらに新しい視点が増える」
ことだと私は思っています。
 

複雑な図形を氷の上に描き続ける、選手たちの足元に注目

写真:Shutterstock

フィギュアスケートの名前の由来は、「氷の上にフィギュア(図形)を描くこと」です。私は40年近く熱狂的にフィギュアスケート観戦を愛している人間でして、選手たちが演技をしている間、どこにいちばん注目しているかというと、
「なめらかに、スピーディに、複雑な図形を氷の上に描き続ける、選手たちの足元」
です。ジャンプやスピンなど、誰の目にもすぐにわかる美しい技を、「一粒一粒のダイヤモンド」だとするなら、ダイヤとダイヤをつないでいく、複雑で美しい図形は、「繊細で細工の美しいプラチナのチェーン」と言えるかもしれません。
フィギュアスケートの演技は、
「ダイヤモンド一粒一粒を見せること」
ではなく、
「演技時間をいっぱいに使って、ダイヤモンドのネックレスを作り上げること」
だと私は思っているのです。

 
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