夫に隠し子がいたとき、自分の子の相続はどうなってしまうのでしょう!? 浮気をされたうえお金も減ってしまうなんて、悔し過ぎますよね。ならば夫が亡くなる前に離婚をしてしまったほうがいいかもしれません。さらに、不倫相手からも取れるものは取ってしまいましょう! 離婚問題を専門とする原口未緒弁護士が、いろいろと知識を授けてくれました。

 

ぴみるんさんからの質問

Q. 隠し子がいる夫と離婚した場合の、財産分与について知りたい。  


30年近く連れ添った夫が、浮気して隠し子まで作っていました。それが発覚したのは2年10ヶ月前。私たちにも子供がいて成人しており、隠し子は10歳らしい。不倫女は既婚者と付き合いながら妊娠して出産しました。女の親は出産に際して夫を呼び出し、生活の面倒とマンションを買わせる確約をとりつけたようです。現在、女と隠し子は我が家から車で10分余りの場所に住み、春夏秋冬と海外旅行三昧で楽しく暮らしています。しかし夫は、世間体が悪いから離婚をしたくないらしく、ズルズルと本宅と愛人宅を渡り歩いて楽しく生きています。私が知りたいのは、女に買ったマンションは離婚時に夫婦の財産として取り上げることができるか?ということ。また夫は今は隠し子を認知していませんが、遺言状で認知するとのこと。死後認知をされた場合の対応策があれば教えてください。(53歳)


弁護士 原口未緒さんの回答

A. マンションが夫名義であれば夫婦の共有財産とみなされますが、
そうでなければ送金記録など何らかの資料が必要です。


離婚するしないを含め、現在の状況でぴみるんさんにできることはいくつかあると思います。ただ夫は不倫相手の子どもを認知していませんから、まずはその子どもが浮気をして作った子であると証明することが必要です。夫は不倫相手とその子どもとしょっちゅう海外旅行もしているようですから、興信所に頼んで写真を撮ってもらうと良いでしょう。もちろん、できるならDNA鑑定をするのが一番確かかと思われます。

さて、不倫相手からマンションを取り上げ離婚時に財産分与で清算できるか、というご質問ですが、これはマンションが夫名義であれば問題ありません。夫婦の共有財産と認められますので、マンションを売ってそのお金を折半することができます。

問題は不倫相手の名義になっていた場合です。これも、夫が購入資金を出したと証明できれば、夫婦の共有財産とみなされる可能性が高くなります。通帳の出金または送金記録などを取り寄せてください。ただし銀行は、通帳の記録を10年前のものまでしか出してくれません。それ以前のものは入手できないのです。問題のマンションは隠し子が生まれた10年前に購入されているようですから、際どい時期ですよね。できるだけ早く確認をされたほうが良いかと思われます。ちなみに不倫相手が夫からもらって遊んだと思われるお金ですが、使われてしまったお金は財産分与の対象に入りませんので、残念ですがこれは諦めざるを得ないでしょう。

 

ただお話を伺っていますと、夫はぴみるんさんと離婚する意志はないようですね。二つの家庭を養えられるほど収入が高い方のようですから、おそらくそれなりの地位のある仕事をされているのではないでしょうか。そういった男性は世間体を気にされますし、若い女性が妻では格好がつきませんので、不倫はしても離婚して再婚まではしたがらないものです。不倫相手も、子どもまでいながらとくに離婚を迫っている様子もないところを見ますと、お金をもらえていればそれで良いのでしょう。

つまりこのまま離婚をしないのであれば、夫と不倫相手だけが納得していて、ぴみるんさんだけが割り切れない状態にいるということになります。これでは気持ちが治まりませんよね。その解決策としては、個人的には、ぴみるんさんも夫以外の男性と恋愛をされては?とお勧めしたいところです。夫は自分のことがあるから何も言えないでしょうし、夫婦関係が破綻した後での恋愛は、離婚の際に不利に働くこともありませんから。

もう一つは、不倫相手を訴えることも可能です。夫の浮気に気づいたのが2年10ヶ月前とのことですが、不倫訴訟の時効は3年ですので、今なら間に合います。とは言いましても、夫と離婚していない限りは不法行為の状態が続いていますから、時効は進行しないということも言えるでしょう。不倫相手から取れる慰謝料の額ですが、子どもまで作っていますから、最低でも200万円。しかももう10歳にもなっており、近所に住むなど悪質ですから、私は300〜500万円ぐらい請求しても良いと思います。ただ、そのお金はおそらく夫が出してあげることにはなると思いますが……。

最後に、ご懸念の死後認知の件ですが、死後認知をされてしまうと残念ながら対応策は何もありません。相続人がもう一人増えてしまうだけなのです。ただ、「死後認知はしても財産は一切残さない」など、ぴみるんさんの子どもに有利になるような遺言状を書かせておけば、そのお子さんが取得できる相続分は少なくなります。あとは、隠し子に渡る財産を残さないよう、ぴみるんさんがたくさん使ってしまうぐらいしか手がないかと……。

思いつく限りの方法をお伝えさせていただきましたので、いろいろとご検討のうえ、経済的にも気持ち的にもベターだと思われるものを選んでいただければと思います。

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PROFILE
  • 原口未緒(はらぐちみお)1975年生まれ。弁護士。学習院大学法学部卒業。2004年に弁護士登録。民事、商事、家事、刑事、倒産処理、債務整理など様々な案件を担当した後、2010年に「未緒法律事務所」を開所。夫婦、離婚案件を主に扱っている。法的な解決策を提案するだけでなく、コーチング、カウンセリング、セラピー手法を取り入れ、「心のケアもする弁護士」として人気がある。著書に『「この結婚もうムリ」と思ったら読む本 こじらせない離婚』(ダイヤモンド社)がある。自身は3度の離婚を経て、現在4度目の結婚をし、第一子をもうける。 この人の回答一覧を見る
  • 山本奈緒子(やまもとなおこ)1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『with』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
 取材・文/山本奈緒子

 

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