日本では一般的に露骨なお金儲けは良くないこととされていますが、日本人が本当に金銭というものに対して嫌悪感を持っているわけではありません。国際的な比較調査の中には、むしろ日本人の方が諸外国の人よりも、お金を持っている方が幸せなれると考える傾向が強いという結果もあるくらいですから、実は、皆、お金が大好きです。

お金が大好きであるが故に、皆がガマンしているのに誰かが出し抜いてお金儲けをするのは許せないという感情が生まれ、これが先鋭化されてお金儲けをタブー視する風潮が出来上がったものと思われます。

 

先ほど、国民性というのはそう簡単に変わるものではないと説明しました。昔に比べて、ガマンをしないことに対する批判が強くなっているのだとすると、それは国民性が変わったのでなく、日本の経済的な環境が悪化した可能性について考えるべきでしょう。つまりガマンを強いられる人の割合や水準が高くなったことで、寛容性が薄れてきたわけです。

ベビーカーの話で言えば、ベビーカーに対して露骨に嫌な顔をしたり、舌打ちする人がたくさんいるわけですが、一部のベビーカー利用者の中には、周囲の状況を考えずに我が物顔で行動する人もいます。つまり皆に余裕がなく殺気立っている状態ですから、当然、トラブルも起きやすくなります。


国税庁の調査によると給与所得者の平均年収は過去20年で12%も下がっており、一方で厚生年金における保険料負担は逆に約14%から17%に増加しました。この間、消費税もアップしていますから、労働者が自由に使えるお金は激減しています。経済的な余裕がなくなっていることも、心理面に大きく影響していることでしょう。

マクロ的な経済状況をすぐに改善することはできませんが、働き方改革などを通じて、もっと自由な職場環境を構築できれば、多くの人の行動を分散させることができます。行動が分散されれば、皆が一斉に動く必要がなくなりますから、抜本的な改善にはならなくても、他人との摩擦をある程度、軽減できるでしょう。

他人を批判ばかりしていては精神衛生上、良くないことは明らかです。できるところから改善していくことが重要ではないでしょうか。

 
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