日韓に生まれる新たな火種


昨年9月に、文在寅大統領と金正恩委員長が平壌で署名した「9・19共同宣言」の第4項の3には、「3・1運動100周年を南北共同で記念し、このための実務的な方策を協議していくことにした」と明記してある。

「3・1運動」とは、1919年3月1日に、33人の韓国の宗教指導者がソウルで独立宣言文を読み上げることに端を発した、日本植民地時代(1910年~1945年)最大の抗日運動である。いまでも韓国では、この日を祝日にして、歴代大統領がスピーチを行っているが、今年の100周年を、南北共同の民族的大イベントに昇華させようとしているのだ。

このイベントに向けて、文在寅政権は昨年秋から、「反日アピール」に余念がない。

昨年10月10日から14日に韓国が開いた国際観艦式で、自衛隊の旭日旗の使用を認めないとしたことで、自衛隊が不参加になるという事態が起こった。

続いて10月30日には、韓国大法院(最高裁判所)が、新日鉄住金に対して、植民地時代の徴用工である4人の原告に対して、一人あたり1億ウォン(約1000万円)の賠償を支払う判決を下した。11月29日には、三菱重工業に対しても同様の判決を下した。

そして第3弾が、11月21日に韓国政府が行った、2015年末の日韓慰安婦合意に基づいて、日本政府が10億円を拠出し、韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」を解散するという発表である。これには安倍晋三首相も呆れ顔で、「国際約束が守られないのであれば、国と国の関係が成り立たなくなってしまう」とコメントした。

〔PHOTO〕gettyimages

さらに昨年末の12月20日、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射するという前代未聞の事件が起こった。まさに一触即発の事態で、「韓国軍は同じアメリカの軍事同盟国であり友軍である」という認識が、日本で崩れた瞬間だった。

防衛省がレーダー照射の第一報を発表した後、ある防衛関係者に聞くと、次のように述べた。

「9月に就任したばかりの鄭景斗(チョン・ギョンド)国防長官は、日本の航空自衛隊幹部学校で、指揮幕僚課程(CSC)や幹部高級課程(AWC)を修了しており、韓国軍きっての親日派だ。そのため、とても鄭長官が主導して行った照射とは思えない。

これからアメリカ軍を通じて真相を確認するが、北朝鮮船籍を捜索中だった韓国海軍の駆逐艦が、北朝鮮にいい顔を見せたい『青瓦台』(韓国大統領府)の意向を忖度して、『日本を一発脅してやれ』という意図でやったのではないか」

 

ともあれ、アメリカ軍の東アジアからの「撤退」は、日韓の新たな軍事的対立という火種を生むことを指摘しておきたい。

総じて言えば、2019年の初日の出を拝みながら、今後の世界情勢について、悲観的にならざるを得ないのである。

21世紀の科学技術は、量子コンピュータを始め、量子力学を基礎にしたものが主流になる。量子力学の基本原理は、「無秩序の中の調和」である。せめて世界情勢も、混乱の中に調和を見出せるものになることを祈りたい。

昨今の米中対立の「最新形」について述べた新刊です。「アメリカン・スタンダード」か、「中国模式」か。ご高覧下さい!

現代ビジネスの元の記事はこちら>>