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【その時、緊急避妊薬が必要だった理由】服用当事者たちの声

【かすみ(仮名・当時大学1年)】
大学1年の時、つき合い始めたばかりの恋人との性行為の後、コンドームが腟内で破れていたことに気がついた。咄嗟にふたりともどうしたらいいかわからずパニックに。私はとにかく急いで浴室に行き、お湯で腟の中を洗った。その間、彼がネットで調べると「病院に行った方がいいらしい」と言う。授業を休みたくなかったし、高いお金がかかるとのことで乗り気ではなかったが、彼が受診を強く希望し1万円を渡してくれたので、翌日かかりつけの産婦人科を受診した。病院ではあっさりとアフターピルを処方され、半信半疑ながらも服用。結果、妊娠はしなかった。それはもちろんよかったけれど、「もしかしたら妊娠かも?」といった、果たしてそれが重大な問題になるのかどうかわからない状況で、不安を解消する手段として選ぶには価格が高過ぎる。もしもあの時、彼が1万円を持たせてくれなかったら、私は不安を身勝手に拭い「妊娠なんてしないでしょ」というカラ元気のまま72時間を超えてしまっていたように思う。また、私のようにかかりつけの産婦人科がある子はたぶん多くはなく、強い偏見に晒されながら人目の気になる産婦人科に行くこと自体が、学生にとっては難しいことかもしれない。もっとこっそり、さらっと買える手段が必要だと思う。

【まどか(仮名・当時中学1年)】
現在、大学生の私が初めてアフターピルを知ったのは、中1の時。当時つき合っていた32歳の男性との何度目かの性行為の際、「ナマでしよう」と誘われた。その時はよく意味がわからなかったが、なんとなくマズい気がして「それ平気なやつ?」と聞いた。すると「これがあるから大丈夫」と海外輸入物らしきアフターピルのパッケージを見せられた。その人との避妊は、普段から腟外射精か射精の直前にコンドームをつける方法。いま振り返れば、よく妊娠しなかったと思うが、学校できちんと避妊の仕方を教わったことはなく、「彼は大人だから正しいはず」「大人だからそんなにひどいことはしないだろう」と過信してしまい、避妊方法を疑ったことはなかった。子どもの性の搾取は、決して一部のやんちゃな子たちだけの問題ではない。私も一見すれば、黒髪で膝丈スカートをはいた普通の女の子だったし、周囲でも貧困家庭から裕福な家庭の子までさまざまな女子たちが、援助交際まがいの違法な性関係を結んでいた。私にとっては、このような違法なルートで目にしたのが人生で初めてのアフターピル。なんとなく怖かったので、いつも駅などのゴミ箱に捨て、一度も飲むことはなかった。

【みさ(仮名・当時36歳)】
36歳の時、4つ年上の彼とは対等な関係が築けていなかった。いま思えば、共依存的な関係性だったと思う。性行為の際にも避妊することを同意してもらえない。「中で出さないで欲しい」と伝えても応じてもらえず、「駄目なの? なんで?」と強い口調で言われると断り切れなかった。危険日ではなかったがひどく心配になり、「避妊 失敗」でネット検索したところアフターピルを知った。近所の婦人科で買えることを知り、すぐに処方してもらいに行った。診察では「コンドームが破れた」と嘘をついた。その後、また同じことが起こった。前回と同じ婦人科で処方してもらったが、「1ヶ月しか経ってないのに、また?」と看護師に怪訝な顔をされ「やはり恥ずかしいことなのかな、2回もおかしいよね」と思った。そして、また3回目が…。その日は危険日だったので「本当にやめて欲しい」と伝えたが「オレには関係ない」と返された。嫌われるのも、強い口調で怒られるのも怖くて反論できなかった。妊娠が不安だったが、仕事が多忙で病院に行けず、さらに週末が被り72時間が経過。婦人科に相談しに行こうにも、前回怪訝な顔をされたことを思い出し、できなかった。その後、妊娠が発覚。中絶を選んだ。

性暴力被害者の支援に取り組むNPO法人「しあわせなみだ」の中野宏美さんは、性暴力被害者が直後に病院へ行くことは難しいと説明。「内閣府の調査では、無理やり性交等をされた経験がある人のうち、警察に届け出される性暴力被害は、たった3.7%。医療関係者への相談は1.8%にとどまります。『嘘だと思いたい』『認めたくない』という心理が働くため、警察や医療機関に行くことが辛いのです。」アフターピルの市販化を強く求めた。

当事者のみなさんと面識がある染矢さんは、「どなたも一見して本当に普通の方ですが、そういう方でもさまざまな背景を抱えている場合がある」と実感したそう。また、他の事例では「勇気を出して医療機関に行っても医療者から高圧的な態度を取られたり、なかには『もうセックスはしない』と約束させられた」という、にわかには信じがたいケースも…。


アフターピルのアクセス改善は、性の環境づくりの一部


服用当事者のエピソードから垣間見えたのは、アフターピルが必要とされるプロセスには、入手経路の課題以外にも、女性の性の健康がないがしろにされた多くの問題が潜んでいるということ。アフターピルのアクセス改善はもとより「もしもきちんと性教育が行われていたら」「女性主体の避妊法が当たり前の世の中だったら」…、あのようなやるせないエピソードは生まれなかったのではないでしょうか。性教育の充実や社会制度の改革は一朝一夕にかなうものではありませんが、「私たちひとりひとりが女性として健やかに生きていくためには、何が必要なのか?」 その答えは、“個人”と“社会”両方の視点から探してみるべきなのかもしれません。


取材・撮影・文/村上治子
構成/片岡千晶

 

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