官報に掲載されている破産者情報を集めてGoogleマップ上に表示する「破産者マップ」に批判が殺到し、同サイトが閉鎖に追い込まれるという騒ぎがありました。IT化の進展で個人のあらゆる情報が網羅される時代が到来しつつありますが、私たちはどう対処すればよいのでしょうか。

 

誰が破産したのかという情報はプライベートなものだと思っている人が多いかもしれませんが、実は政府が毎日発行している「官報」に掲載されており、誰でも自由に閲覧できます。誰がいつ破産したのかという情報を広く知らせないと、債権者(破産者にお金を貸していたり、代金を受け取る予定だった人など)が損失を被ったり、破産の手続きに支障をきたす可能性があるというのが掲載の主な理由です。一部の金融関係者や不動産関係者にとって官報を閲覧するのはごく日常的な作業です。

官報は国民に広く情報を知らせるための媒体ですが、政府が発行しているため、非常に見づらく、官報のことをよく知っている人でなければ自由に閲覧できないというのが現実でした。皮肉なことですが、そうだったからこそ破産情報が広く知れ渡ることがなかったわけです。

破産者マップの運営者は、こうした状況を逆手に取り、官報に掲載される情報を自動的に収集してGoogleマップ上に表示するサイトを構築。サイトを見れば、どこに破産者が住んでいるのか一目瞭然にしてしまいました。

運営者は、社会の役に立つサイトを作りたかったという趣旨の発言をしていますが、運営者の詳細情報を明かしていないなど、その主張にはかなり怪しい部分があります。何より地図で表示するという利用者の「覗き趣味」をそそる機能をメインにしていたことからも、必要に迫られた利用者を想定したものでないことは明らかでしょう。

運営者にはかなりの悪意が感じられますから、批判が殺到するのは当然ですが、この話で重要なのは、見づらい形式だったとはいえ、破産者情報は公開されていたという点です。社会にITが普及すると、これまで存在が意識されなかった情報が活用され、思ってもみなかった使われ方をする可能性があるわけですが、今回のケースはその典型例といってよいでしょう。

ITが社会に普及することがもたらす影響というのは、その社会を構成しているメンバーの性格によって大きく変わってきます。

日本では破産は恥ずべきことであり、場合によっては「あの人は破産した」としてバッシングする人が一定数出てくるのは間違いありません。
しかしながら、民主国家における破産というのは、国民に与えられた権利の一つであり、どうしても負債を返せなくなった人は、破産を宣告することで、無制限の返済地獄から脱出できる制度です。他人に誇れるような話ではないかもしれませんが、破産者は犯罪者ではありません。

 
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