ほその・ひとみ/1978年 岐阜県生まれ。金沢美術工芸大学卒業。渡英し、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートにて陶芸を学ぶ。作品は、ヴィクトリア&アルバート博物館(イギリス)やギメ東洋美術館(フランス)などでパーマネントコレクションとして展示されている。


「陶芸家の細野仁美さんに会ってみませんか?」と声をかけていただき、「お会いしたいです!」と前のめりに返答。ウェッジウッドの取材で訪れた英国出張で、アトリエを訪れる機会に恵まれました。私、編集長・大森が、世界的に活躍される陶芸家・細野 仁美さんの情熱の秘密を探ります。
 

アーティスト・イン・レジデンスに選ばれて
 

大森 仁美さんはいつくらいから陶芸家を志すことを決めていたのですか?

細野仁美さん(以下、細野) 実家が美濃焼の産地の近くで、祖父がタイル職人で。小さい頃から焼き物に囲まれていました。大学を卒業後、セラミックの大量生産される焼き物のデザインを学ぼうと、デンマークにデザインの勉強をするために留学をしました。主に大量生産されるセラミック製品のデザインの勉強です。でも、勉強しているうちに、デザインを受け渡して誰かに作ってもらうのではなく、自分で作っちゃいたいな、と。土って、どんな形にもなるんですよ。この魔法のような素材を使って、アートクラフトとしての陶芸と向き合いたい、と強く思うようになったんです。

大森 それで、今度はイギリスに渡られてロイヤル・カレッジ・オブ・アートで陶芸を学ばれたんですね。

細野 技術はもちろんですが、陶芸の歴史などもしっかりと学びたくなったんです。そうすると、ウェッジウッドの話は本当によく出てくるんですよ。イギリスの焼き物の歴史そのもの、というくらいに。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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大森 そのウェッジウッドで、アーティスト・イン・レジデンス(編集部注:芸術制作を行ってもらうため、アーティストにある土地に一定期間滞在してもらいながら制作活動をしてもらう事業のこと)に選ばれて。

細野 本当にエキサイティングしましたし、日本の家族を、それでやっと安心させることもできました(笑)。

大森 そこではどんなミッションがあったのですか? 

細野 ウェッジウッドのアイコニックなジャスパーのテクニックを使うこと。エクスクルーシブなアートピースであること。そして、世界中のマーケットに受け入れられること。そういう製品をクリエイトしてほしい、とオーダーされました。いろいろ思いを馳せ、自然界にあるような自然なままの花や葉を表現したい。極めて白に近い淡い色を出したい……たとえるなら和菓子のような繊細で艶やかなイメージのものを提案したいな、と。ストーク・オン・トレントに滞在し、工房にいる職人さんたちとコミュニケーションをしながら作り上げていく日々が続きました。

「メールや電話でのやりとりではなく、現地でたくさんの職人さんとのやりとりで気づくことはたくさんありました。私が何かを相談すると、『仁美がやりたいことはこういうこと?』とすぐに実験してくれたり、過去の事例を教えてくれたり……ウェッジウッドの職人さんはアーティストや研究者のようなところもあり、皆の知見や感性を共有して作品を作り上げていく行程は本当にエキサイティングでした」
上記写真は、Kasumi (花霞) Vase<世界限定5ピース>¥2000000/WEDGWOOD BY HITOMI HOSONO COLLECTION(ウェッジウッド)2019年秋発売予定

「自然界にあるような葉の状態を表現するために、パーツをイレギュラーにオーバーラップさせることにこだわりました。時間をかけると接ぎ目が乾いてきてしまうので時間との闘いの作業です」
「イギリスにいることで、日本人というアイデンティティがどんどん作品に出てきていると感じています」
上記写真は、 Shōka (昇華) Vase <世界限定5ピース>¥1700000/WEDGWOOD BY HITOMI HOSONO COLLECTION(ウェッジウッド)2019
年秋発売予定

WEDGWOOD BY HITOMI HOSONO COLLECTION 全6種(2019年秋発売予定)

大森 アーティスト・イン・レジデンスの体験はどのようなものとして仁美さんの中に残っていますか?

細野 デザインを渡しただけでは決してできない濃密なコミュニケーションをとれたことが財産になっています。まず、「何か新しいものをつくろう!」という思いがあって、発想するところから人と思いを共にし、「違うかも?」「変えたいかも?」という少しの違和感もすぐに伝えられるという環境は本当に贅沢で、素晴らしいものでした。そして、職人さんが自分ごとにして一緒に課題解決に向き合ってくれ、好奇心旺盛で、クリエイティブで。こんなブランドは他にないんじゃないかな、と思います。

私のどんな質問にも真摯に答えてくれる仁美さん。インタビュー予定時間を1時間近くオーバーしてしまいました。本当にありがとうございました!
 
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