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SNSで話題! 学校の保健の先生が「コンドームソムリエ」になったワケ

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誰もが性を普通に語れる
セーフティゾーンを作りたい


−−− 最後に、現役の養護教諭であるアイさんから見た、学校の性教育事情について伺わせてください。冒頭でおっしゃっていたように、学校の性教育は何かと批判されがちです。そんななか、先生方の間で何か話し合いを持たれる機会はあるのでしょうか?

アイ:そのあたりは管理職の価値観に大きく左右されますね。自治体の方針にも影響を受けます。

 

−−− なるほど…会社と似ていますね。では、それを踏まえた上で、アイさんはどんな性教育をされているのですか?

アイ:個人的には、真っ向からやってもダメ出しをされてお蔵入りになると意味がないと思っているので、最近は“コミュニケーション”について話すことにしています。
きっと多くの人が、コンドームを着ける必要性は理解していると思うのですが、問題はそれを言い出せないことなんです。その原因は、自己肯定感の低さだったり、言いにくいことを相手に伝えるスキルを学んでいないことだったり。
少し遠回りでもどかしいですが、まずはいざという時に「イヤ!」と言える人を育てることが外側からの性教育かなと。他には、月経の仕組みを話す流れでピルに言及したり、性感染症に関する実験をしてみたり。

先日の保護者会では「お子さんをたくさん褒めてください」というお話しをしました。中学生になると、お子さんから目を離してしまいがちな保護者の方は多いようですが、実は中学生は、以前ほどべったりと甘えられなくてもやっぱり褒めて欲しい微妙な年頃。親にたくさん褒められた子どもは自己肯定感が高く、他の子に攻撃的な言葉を投げつけることもないんですよ。

−−− 自分の学生時代を振り返ると、あまり保健の先生に教わった記憶がないのですが、アイさんはどのように生徒と交流されているのですか?

アイ:体育や自習の時間を分けてもらって保健の授業をしたり、朝会で話したりしています。それから、女子トイレの個室には“生理の仕組み”のポスターを貼って。なかには個別で性の悩み相談をしに来る子もいて、そういう時は授業ではないので、踏み込んだ話をすることもありますね。

−−− 先生方の意識の持ちようで、差が生まれそうですね。

アイ:いまは、保健室の前の廊下にLGBTQ+に関する大きなポスターを貼っています。さらに部屋の中には性感染症や避妊の仕組みに関するポスターも。保健室を訪れる大半の子たちは「頭が痛い」など性とは関係のない用件ですが、そんな時にチラッとでもポスターが目に入ったら、「ここはそういう話をしてもいい場所なんだ」と感じてもらえるんじゃないかな。
結局、学校でもコンドーム試触会でもやりたいことは同じで、誰もが気負わず性について話せる場づくりをしていきたい。そして各自が、また自分のまわりにそういう場を作っていってくれたら本望ですね。

気になる「コンドーム試触会」は、おすすめコンドームを紹介する前半と特別ゲストとともに性について語り合う後半との2部構成。「必ずトークタイムを設けているのは、コンドームをきっかけに性について考えたり話したりしてもらい、そこで学んだことを持ち帰って身近な人とシェアして欲しいから。性の話は一部のエロい人たちだけのものではありません。誰もが明るくヘルシーに性を語れるようになるといいですよね!」(アイさん)

撮影・取材・文/村上治子
構成/片岡千晶(編集部)


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