劇中でも食卓の風景が家族の過去と今をつなぎ、料理のひとつひとつが思いや人柄を伝えています。

蒼井「私はオムライスを作るシーンのために卵を大量に買って、家で練習しました。スーパーで6パック買ったときには領収書要りますか? と聞かれたので業者だと思われたかもしれない(笑)。大変でしたけどお陰でうまくなって、家でもふわとろオムライスを作って食べてます」

竹内「すごくよく覚えているのは、誕生日のテーブルに並んでいたししゃものフライ。なんでだろう?」 

蒼井「目の前にあったから?」

竹内「そうかもしれない(笑)。リハーサルを重ねた大事なシーンだったから、印象に残ったのかな? あとは妹がすごい長い名前を付けちゃった移動販売のカレー」

蒼井「自分の努力をメニュー名に入れちゃう、っていう(笑)」

竹内「一生懸命なんだけど不器用で、うちの妹はこういうところがあるんだよね、ってお姉ちゃんとしては思っていました(笑)」

竹内さんが「これまで同じ作品やCM、食事会などでご一緒したことがあったから、この人に付いていけば大丈夫! と思っていました」と言えば、「まったく同じです」と蒼井さん。本格的な共演を経て、女優として新たに発見した面もあるのではないでしょうか。

 

竹内「本能のままでやる人だと思っていたけど、意外と考えを組み立てているんだなと感じました。本能的なところもあれば理論的なところもあって、無敵な人だなって」

蒼井「どっちも中途半端なだけなんです。竹内さんはクレバーなイメージそのままでした」

竹内「え、結構ちらかってるよ? 話しながら答えを見つけていくほうだし。クレバーとか言われたことがないから、もっと聞きたい(笑)!」

蒼井「頭の回転が速くて、それと同時に体が動いているような気風のよさが同時にあって。ダブルエンジン搭載みたいな感じです」

竹内「うれしい、泣きそう。最近、褒められることがないから」

蒼井「ホントに泣いてる、誰かティッシュください(笑)。私は光が見えるかどうか判断して自分のなかで対策がないと進めないから、ノッキングを起こしがちなんです。飛び込む勇気が出なくて、その分の間ができちゃうというか。これをやることでどういう感情が出るか、ある程度パターンを用意しないと怖いんですね。だから今回は竹内さんに乗っからせていただきます、ってとても心強かったです」

竹内「本当にうれしい。こういうことを話す機会って、あまりないよね? 雑誌とかで“俳優同士が集まって熱く演技論を語りあっていた”みたいなことを読むと、みんなどうやって話しているんだろう、って」

蒼井「あれは都市伝説ですよ、きっと。みんな最近買った家電の話とかをしているはずです(笑)」

竹内「誰に褒められるかが大事だなって今、すごく思ってます(笑)」

蒼井「妹からの言葉でした(笑)」

<映画紹介>
『長いお別れ』

父の70歳の誕生日、久しぶりに帰省した娘たちに母から告げられたのは、厳格な父が認知症になったという事実。それぞれの人生の岐路に立たされている姉妹は、思いもよらない出来事の連続に驚きながらも、変わらない父の愛情に気付き前に進んでいく。ゆっくり記憶を失っていく父との7年間の末に、家族が選んだ新しい未来とは─。中島京子の同名小説を原作に、『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太氏が映画化。

監督:中野量太 
出演:蒼井優 竹内結子 松原智恵子 山﨑努 北村有起哉 中村倫也 杉田雷麟 蒲田優惟人
脚本:中野量太 大野敏哉 
原作:中島京子『長いお別れ』(文春文庫刊)主題歌:優河「めぐる」

企画:アスミック・エース Hara Office 
配給・制作:アスミック・エース 
©2019『長いお別れ』製作委員会 ©中島京子/文藝春秋
5月31日(金) 全国ロードショー


取材・文/細谷美香
撮影/目黒智子
構成/片岡千晶(編集部)
 
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