2017年に『誰がアパレルを殺すのか』という本が出版され、その衝撃的な内容は、業界のみならず広く話題となりました。国内アパレル産業の不振が叫ばれて久しく、百貨店の相次ぐ閉店や、低価格帯ファッションの栄枯盛衰などは、買い手の私たちも実感しているところではないでしょうか。多くの国産アパレルが販路変更やリブランディングを迫られる中、倒産の危機を乗り越えて業績を伸ばしているのがストライプインターナショナルです。同社創業者の石川康晴社長が成長の秘訣の“路線転換”と未来を語ってくれました。

株式会社ストライプインターナショナル 代表取締役社長 兼CEO・石川 康晴(いしかわ やすはる)
1970年岡山市生まれ。岡山大学経済学部卒。京都大学大学院経営学修士(MBA)。94年、23歳で創業。95年クロスカンパニー(現ストライプインターナショナル)を設立。99年に「earth music&ecology」を立ち上げ、SPA(製造小売業)を本格開始。現在30以上のブランドを展開し、グループ売上高は1,300億円を超える。公益財団法人 石川文化振興財団の理事長や、国際現代美術展「岡山芸術交流」の総合プロデューサーも務め、地元岡山の文化交流・経済振興にも取り組んでいる。


創業5年目に倒産の危機に。モード志向からの脱却で生き残りを図る


ストライプインターナショナル(以下、ストライプ社)は、「earth music&ecology(アース ミュージック&エコロジー)」、「koe(コエ)」など約30のファッションブランドと、洋服レンタルサービス「メチャカリ」やファッションECデパートメント「ストライプデパートメント」、ホテル併設型グローバル旗艦店「hotel koe tokyo(ホテル コエ トーキョー)」など、ライフスタイル&テクノロジー領域を手掛ける企業です。同社の前身となるクロスカンパニーとして1994年に石川氏(当時23歳)が岡山で創業。しかしその歩みは、順風満帆とはいかなかったと語ります。

石川社長には、講談社社員向けにゲスト講師として講演いただきました。佐野眞一氏の『だれが「本」を殺すのか』が出版され話題となったのが2001年のこと。急速な出版不況が叫ばれてから20年ほど経過した今、出版業界と国内アパレル業界の共通点や活路は見いだせるのかと、200名ほど入る大会議室は熱気に包まれました。

石川康晴社長(以下、石川):創業時は、国内のアパレル業界がシュリンクし始めた時期でした。そんな中、創業から15年はアパレル一筋でやってきましたが、事業領域を衣食住に拡大し、現在は、イーコマース、サブスクリプションにも挑戦しています。創業以来、“路線転換”を意識的に仕掛けています。


ーー経済産業省のデータによれば、国内のアパレルの市場規模はピーク時の1991年は約15.3兆円、2015年には10.5兆円と20年間で3分の2に縮小。2017年には9.2兆円と10兆円を切っています。業界縮小が急激に進む中、同社には路線転換を迫られる転機があったと言います。

石川:創業5年目に会社が倒産する危機に陥りました。その時の業態はセレクトショップ。アバンギャルドなブランドを扱っていました。このまま高級路線のとんがったショップをやっていてもダメだ、と99年にナチュラルテイストでベーシックアイテムを扱うブランド「アース ミュージック&エコロジー(以下、アース)」を立ち上げました。「モード・高価格・仕入れ(バイヤーによる買い付け)」から「カジュアル・低価格・SPA(自社で製造して自社で販売する)」に大胆な路線転換をしました。当然、スタッフは大反対でしたし、会社にとっても非常に大きな意思決定でしたが、このおかげで生き残れたんです。

その後、同社は成長を続け、2020年にはグループ売上高1500億円達成すると自信をのぞかせます。


ーー若者向けのファッションの新ブランドの宣伝といえば、ファッション誌に掲載される(広告を出す)、人気モデルが着るといったことで認知され、雑誌掲載・モデル着用アイテムから売れていくというのが一般的です。

石川:立ち上げ当初、「アース」のF1層(20~34歳の女性)の認知度は17%程度でした。それを50%まで上げようと、2010年3月から女優の宮﨑あおいさんをブランドのイメージキャラクターに起用し、CM放映を開始しました。

ーー宮﨑あおいさんが「ヒマラヤほどの〜」とTHE BLUE HEARTSの名曲「1000のバイオリン」を口ずさむCMは、みなさんもご記憶にあるかもしれません。

石川:ネット検索という概念でCMを作りました。「宮﨑あおい 歌う」と検索するとアースのWebサイトが出てくる。服のCMには見えなくて、「車のCM?」などと言われたりしました(笑)。しかし認知度は急上昇し、3年で600億円を超える規模まで伸ばしました。雑誌掲載や接客力の向上だけでは、ここまで急成長できなかったと思います。

「企業継続のためには大胆な路線転換が必要だ」と繰り返し述べる石川社長。

「アース」は一躍、若者向けファッション誌やサイトがこぞって取り上げる一大人気ブランドへと成長しましたが、石川社長はそこに安心してはいませんでした。

 
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