銀幕で見せた、山﨑賢人の主演俳優としての風格

山﨑賢人の好演で大ヒットの映画『キングダム』(全国東宝系にて公開中) 原泰久/集英社 Ⓒ2019映画「キングダム」製作委員会

そして、もうひとりのセカンドブレイクが山﨑賢人。主演映画『キングダム』は興行収入54億円を突破(2019年6月17日時点)。漫画原作の実写化はファンの反発も激しく、非常にリスキー。にもかかわらず、これだけ大成功をおさめた要素はいくつもありますが、山﨑らキャストの好演は間違いなくそのひとつでしょう。

山﨑は、戦災孤児の主人公・信に10kg減量で挑み、本格アクションを堂々披露。気性が荒く血の気の多い信を、闘志みなぎる表情で体現し、主演俳優の風格を示しました。その眼差しは野性的でありながら、透明感に溢れ、少年漫画の主人公にぴったり。

特に左慈(坂口拓)との対決シーンは映画全編における大きな見せ場に。強大無比な左慈の前に倒れ、一度は死をも覚悟したかのような、瞳に恐怖の張りついた表情は、山﨑の俳優としてのポテンシャルを証明する名演技でした。

万人に愛される清潔感あふれるルックスは、漫画そのもの。一時期は少女漫画原作の相手役などが続き、それがネックになっていた面も。

しかし、ドラマ『陸王』(TBS系)あたりから演技力を評価する声が増えはじめ、昨年はドラマ『トドメの接吻』(日本テレビ系)、映画『羊と鋼の森』、そしてドラマ『グッド・ドクター』(フジテレビ系)と積極的に役柄の幅を広げ、イケメン俳優から実力派へスライドチェンジの潮目を見せていました。

その決定打となったのが、今回の『キングダム』です。今でも瞼を閉じると、挑発的に唇の端を上げる信の表情や、拳を振り上げる仕草が浮かんでくるのは、それだけ山﨑賢人の演じた信が鮮烈だった証拠。映画の爆発的なヒットを受け、若手実力派の筆頭格としての評価を確かなものにしました。

すっかり定着したイケメン俳優という呼び名。ですが、芝居の世界を志した以上、この称号に満足している俳優はいないと思うのです。もちろん見た目を支持してもらえることはありがたい。でもそれだけで終わりたくはないと、彼らは日々研鑽を積んでいます。

今はまだ実力不足に見えるイケメンが数年後には大化けすることも珍しくないのが、俳優をウォッチする楽しさのひとつ。次に躍進を遂げるのは誰か。これからも楽しみに見守りたいと思います。

<ドラマ紹介>
TBS火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』

毎週火曜夜22時~TBS系にて放送(最終回は6月25日よる10時〜放映予定)
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、桜田通、江口のりこ、梶原善、酒井敏也、内田有紀、ユースケ・サンタマリア ほか
原作:朱野帰子

<作品紹介>
『キングダム』

全国東宝系にて公開中
監督:佐藤信介 
脚本:黒岩勉 佐藤信介 原泰久
出演:山﨑賢人、吉沢 亮、長澤まさみ、橋本環奈、本郷奏多、満島真之介、阿部進之介、深水元基、六平直政、髙嶋政宏、要 潤、橋本じゅん、坂口 拓、宇梶剛士、加藤雅也、石橋蓮司、大沢たかお
Ⓒ原泰久/集英社 Ⓒ2019映画「キングダム」製作委員会

 

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

前回記事「ドラマのタイトルがこの10年で長くなったテレビ局の事情」はこちら>>

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。18年に大腸がん発見&共存中。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

 
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