先にクランクアップの内野に西島の反応は


そんなわけで、節目となる12話は実家を訪れた後のシロさんとケンジの心情の変化にも注目したいところです。ラストシーンの撮影現場はさぞかし神妙な面持ちで臨んでいたのだろうと想像していたところ、『きのう何食べた?』のテレビ東京祖父江里奈プロデューサーから聞いた話に若干、肩透かしを食らいました。

「最終回のラストシーンは西島秀俊さんも内野聖陽さんもアドリブが満載。スタッフ全員笑いを堪えるのに必死でした(笑)」

笑いに包まれた現場で発せられたアドリブは生きた台詞。きっとじわーっと温かい気持ちにさせてくれるに違いありません。

またこんな撮影裏話も聞いています。終盤のカフェシーンは原作者のよしながふみ先生も立ち会っていたとのこと。ドラマの最終話としての落としどころをご覧になって、「これも1つのクライマックスシーン!!」と感激されている様子が伝えられています。これ以上、期待値を高めてしまうと終わった後に迫りくるであろう反動の大きさが恐ろしくも思えますが、祖父江プロデューサーはとどめを刺すかのように言葉を続けます。

「クランクアップを内野聖陽さんが先に迎えてしまったので、西島秀俊さんがずっと『寂しいよー寂しいよー』ともおっしゃっていました」


「寂しいよー寂しいよー」の声が続編に繋がる?!


お二人にその台詞をそのまま返したくなるほど。エピソードが更新されない現実に耐えられずに「寂しいよー寂しいよー」のツイートも急増しそうです。そんなロスを解消させてくれる続編への声も既に高まっていますが、残念ながら現段階では未定。テレビ東京トップの小孫茂社長が5月30日開催の定例記者会見で発言した「ご要望にこたえる意味でも、個人的にはパート2やスペシャルといった新たなコンテンツを制作していけたらと思っています」の言葉が頼り。でも、具体的に動き出した話はまだ確認されていません。ただただ切望するばかりですが、ドラマ氷河期の今は人気ドラマを重宝する向きが以前より強まっていますから、今期最も話題を作った同作のファンの想いを裏切ることは決してないはずです。

現に異例のイベント展開として『きのう何食べた?』展(GALLERYX BY PARCO・東京都渋谷区・6 月 13 日(木)~7 月 7 日(日))が現在開催中です。期間は限られていますが、これもひとつのロス解消法にもなるでしょう。また有料配信プラットフォームの「Paravi」などでこれまでのエピソードをいつでもどこでも振り返ることもできます。そして、お約束のBlu-ray BOX&DVD BOXは9月18日(水)発売予定。限定で撮影裏側に密着した映像や出演者インタビューなども収録される予定です。

またファン同士、ツイッター上で盛り上がり続けることもロス解消法にも繋がるかもしれません。時間もお金をかけずに日々作る料理の中で、シロさんに習って隠し味に「めんつゆ」を使ったり、トマト缶に水を入れて洗うついでに鍋に水分を足したりするだけでも、密かに思い返すことができそうです。そんなファンのロス解消法がやがて、続編やスペシャル版の実現を後押しする良い循環に繋がっていくものと信じたいものです。

<作品紹介>
ドラマ24「きのう何食べた?」

テレビ東京にて毎週金曜深夜0時12分放送(最終話は6月28日深夜0時12分より)
出演:西島秀俊、内野聖陽 ほか
©「きのう何食べた?」製作委員会

 

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

「ドラマ『きのう何食べた?』に見る、作り手とファンの正しい愛し・愛され方」はこちら>>
「『きのう何食べた?』原作ものが吉と出るドラマの3つの「条件」とは?」はこちら>>

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

 
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