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男性更年期、女性も知っておきたい3つの症状と対処法

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女性の更年期とは違い、まだまだ認知されていない男性の更年期。パートナーとの安定した関係を築くためには男性の更年期を理解することも必要となります。聖隷浜松病院の今井伸先生に、男性の体の変化についてお話を伺いました。


口にしづらい中高年男性の性


男性の性的なことについては女性からは尋ねにくく、また、話しづらい内容なのではないでしょうか。さらには、性欲が減退する男性更年期については、まだ認知された歴史が浅いため、情報が多くないのが現状です。男性自身にも「弱音を吐くなど格好が悪い」「俺はまだまだ現役だ」というプライドがあるため、問題を表面化しづらいという傾向があります。

 

私が日頃から患者さんたちに接していて感じるのは、男性の性欲の弱まりは、仕事に対するスタンスとも関係しているということです。つまり、バリバリ働いている男性は性欲や勃起力も問題ないことが多いのです。
しかし、「最近ちょっと仕事の方が……」という方は、並行して性欲も落ちている印象があります。やる気と性欲が同時に弱まるのは、男性が男性らしく生きるために必要な男性ホルモンの分泌低下、つまり男性更年期の一症状であると言えます。男性の場合、女性のように一気にホルモン値が下がるのではなく、緩やかに落ちていきます。これもまた、男性更年期が気付かれにくい一因です。

「最近どうもやる気が出ない……」
「セックスが最後までできなくなってきた」
など、性欲ややる気の衰えを感じたときは、一度ホルモン値が正常なのか、下がっているのかを調べる血液検査を専門医療機関で受けて見るのも一案です。
検査では男性ホルモンの「テストステロン」の中でも体内で活動している「遊離テストステロン」というものを測定します。その結果数値と基準値をもとに、ホルモン補充した方がよいかを専門医が判断します。

 


男性更年期に何が起こるか


男性更年期は、医学的にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれています。40代後半ごろから性よく減退ややる気の低下といった悩みを訴えるようになり、50〜60代で最多となります。しかし、早いと30代、年配の方ですと70〜80代で発症するケースもあります。女性のように「閉経を挟んだ約10年間」といった、わかりやすい時期がないのも特徴です。
男性更年期障害が疑われる患者さんを対象にした問診票には「精神症状」「身体症状」「性機能の症状」の3項目があります。主なものを紹介します。

・精神症状……不眠、無気力、イライラ、集中力や記憶力の低下、不安感、抑うつ
・身体症状……のぼせ・多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛、めまい、耳鳴り、頻尿
・性機能の症状……朝立ちの消失、勃起不全(ED)、性欲減退

症状の中には、身体的なものや性機能面だけでなく、「うつ症状」も含まれています。
実は、男性更年期障害とうつ症状に関係があるのではないかと言われ始めたのは比較的最近のことです。うつ病だと思っていたら、男性更年期のうつ症状だったというケースもあるのです。うつ病で医師の治療を受けている人が性機能障害を発症していて、私のところで男性ホルモンを補充したら、性機能障害もうつ症状も良くなったというケースが少なくありません。

男性更年期の症状① 勃起が弱くなる
中高年男性が一番気にするのは、やはり勃起力の弱まりです。性欲自体も落ちてきますが、「若いころのように硬くならない」「勃起が維持できない」「反応が弱い」といったことがたびたび起こるようになってきます。するとセックスのときにうまく挿入できなくなったり、射精できなくなったり、射精まで至らなくなったりすることも。
そして「あれ? なんだかおかしいぞ……」と動揺したり、「またうまくいかないかもしれない」と不安を抱いたりするようになると、また失敗に終わりがちに。そうして失敗が重なると男として終わったように思えて、どんどん自信を失っていってしまいます。
勃起しなくなったときの男性の動揺は、女性が想像する以上のものです。そんなときに「またダメなの?」「わたしのこと好きじゃなくなったからじゃないの?」という言葉は禁句です。さらに落ち込んで立ち直れなくなるケースもあるため、注意が必要です。

男性更年期の症状② 射精しにくくなる
勃起の弱まりに伴って、射精しにくくなるという問題も起こります。これは加齢の影響の他にも、「前立腺肥大」が関係してくるケースがあります。
前立腺は精液を作る働きを持つ臓器で、加齢によって腺腫が徐々に肥大することがわかっています。原因ははっきりと解明されていませんが、男性ホルモンが関与してくるのではないのかといわれています。肥大の具合は見た目にはわかりませんが、検査で肛門から前立腺を触診すると、肥大の程度が分かります。また、エコーで検査すればより確実に診断できます。前立腺肥大が進むと、主に尿が出にくくなるなどの排尿障害を起こしますが、同じように射精もしにくくなった上に、残尿感がある、尿の勢いがなくなったなどの症状がある場合は、前立腺肥大の検査を受けることをおすすめします。

男性更年期の症状③ 性欲が落ちる
男性ホルモンは性欲の源です。男性ホルモンの分泌が低下すれば、性欲も低下します。中には、20〜30代から低下するケースも。近年顕著なのが、本来、性に関して最もポジティブである青年期男子の射精回数が少ないということです。20代でも射精の頻度が週1回以下というような方が珍しくありません。

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