私はよくみなさんにする話があります。「ここに自由に使えるお金が10億円あったら、何をしたいですか?」。さて、何をしますか?

――うーん、旅行に行くかな。1億円分……くらい?

藤野:旅行で10億円は使い切れないですもんね。後の残りは?

――8億円か9億円で、投資や貯金をするとか……。

藤野:いざ10億円と言われると何か大きなことって、すぐには出てこないのではないではないでしょうか?
旅行や投資、という答えは今の生活に大きな変化を求めていないので、幸せだということですね。
もし何かしたいことがあったら、「10億円なくても今すぐにできない?」と聞くんです。旅行だったら行けますよね。金額の規模の大小はありますけれど、投資だって小さい規模なら今すぐにできますから。

「10億円あったら会社を辞めたい」という人なら、「なぜ今すぐ辞めないの? できるよ」って言ってあげたいです。そんなに辞めたいならすぐに辞めて、行きたくなる会社を選べばいいと思う。
他には「離婚したい」というのもありますね。それなら、お金のために結婚しているということがわかります。
10億円あったら何がしたいかという問いかけで、「自分の本音」がわかるんです。

――お金があってできること、できないことに気づけそうですね。

藤野:はい。お金を持つことで、会社から近いところに住めたり、ふかふかの高級なベッドを買えたりと「不便」は解消できるけど、幸せはなかなか増えません。お金が3倍あっても、3倍食べたら体調を崩すし、部屋が3倍広くても寝るスペースは同じです。
それなのに、自分が不幸せなのは、お金が足りないからって思っている人も多いんです。

――お金持ちの人はみんな、「お金がたくさんあっても、幸せだとは限らない」と気づいているのでしょうか。

藤野:いえ、お金持ちの人には、2パターンいると感じます。

お金があっても「欠乏」という心理状態で、「お金を稼げば稼ぐほど幸せになる」と思いこんで、さらに稼ごうとしている人。でも、全然幸せにならないからもっと稼ごうとして、お金はたくさんあるけど、夫婦関係がうまくいかなかったり、子どもに裏切られたりしているのです。

一方で、お金はあればいいと思っているけど、それだけで幸せにはならないと気づいている人。お金はやっぱり手段で、いい仲間と一緒に楽しい時間を過ごせることが、人間の一番欲しいものだと思っている。
その考えをベースにして、仕事を組み立て、どんな人生を送りたいかを考え、お金とどう向き合っていくのかをじっくり考える。仕事の質をなるべくよくしていって、投資も挑戦してみて、学んだり、世の中とコミュニケーションをとったりしていく。

私は後者の方が、本当に目指したい姿だと考えています。