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雅子さまがロシア語を話せる理由〜モスクワでの幼少生活

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ジュネーブで生まれた双子の妹たち

雅子さま3歳。モスクワにて双子の妹と散歩を。写真/宮内庁提供

昭和41年(1966年)、双子の妹たち、礼子さんと節子さんがスイスのジュネーブで生まれました。父の恆さんは1カ月半ほどジュネーブに出張することになり、それが優美子さんの出産の時期と重なったため、病院事情のよいジュネーブに家族を呼び寄せたのです。

優美子さんは、ジュネーブの市立病院で礼子さんと節子さんを出産しました。当時、雅子さんは2歳半。いちばん親に甘えたい年ごろに双子の妹たちが誕生したのです。恆さんは仕事の都合で、一足先に雅子さんを連れてモスクワに帰ることになりました。

そのときの様子を、恆さんは次のように語っています。
「ジュネーブから飛行機でコペンハーゲンを経由してモスクワに帰る途中、コペンハーゲンの空港で待ち合わせが2時間半もありましてね。雅子はまだ2歳7カ月ですし、どうなることかと思っておりました。
ところが、雅子はちゃんとおとなしく私の言うことを聞いて、わがまま一つ言わない。やっぱり、小さいながら周囲の状況がわかっていたのだと思います」

当然、両親は子育ても生まれたばかりの双子にかかりきりにならざるを得ません。長女の雅子さんは、2歳半くらいから聞き分けがよかったといいます。
普通の姉妹なら姉がワンマン的なリーダーシップをとるところでしょうが、小和田家の場合は下が双子という連合軍でしたから、雅子さんは自分は姉としておりこうにしていなくてはいけないと、自然と周りに気を配る性格を身につけたのでしょう。

そのときの様子を、井上さんはこう語ってくれました。
「お産のあと、ご主人と雅子さんが先にモスクワに戻ってこられ、しばらくして奥さまと礼子さん、節子さんが戻ってきました。そのときから雅子さんは、ご自分がおねえちゃまになったことを自覚されたのでしょう」


厳寒のロシアでスキーやスケートを楽しむ


外交官という職業は、周りからは華やかに見えます。でも、それは裏側を知らない人の想像でしかありません。内実は、定時に帰宅できることはほとんどなく、妻も「夫人同伴」という公務を努めなければなりませんし、上司の夫人やその家族とのおつき合いも多いのです。

モスクワ時代、保育園から帰ってきた雅子さんの第一声は、「ただいま」ではなく、
「ママ、今夜はお出かけに行くの?」
でした。
「行くわよ」
と優美子さんが答えると、雅子さんは「ふーん……」と言ったきり、寂しさに耐えていたといいます。

たとえお手伝いさんがいても、子どもたちは寂しい想いをするのです。
両親がパーティなどで家を留守にします。そんなとき、雅子さんは双子の妹たちに、
「おねえちゃまがついているからね、おねえちゃまがやってあげるね」
と接するようになったといいます。
「まだ自分も小さいのに、双子の妹たちの面倒を見るおねえちゃまの雅子さんの姿は立派で、本当におりこうな子でした」
と井上さん。

外交官は、海外の赴任先では上司の家族とも家族ぐるみのつき合いをしなければなりません。当時の上司の夫人は、幼い日の雅子さんをこんなふうに覚えていました。
「小和田家におじゃましたときのことです。当時3歳くらいの雅子ちゃんが、『おばちゃま、コーヒーになさいますか、それともお茶になさいますか』と私に聞くのです。まだそんなに小さなお嬢さまがお母さまのお手伝いをするなんて、小和田夫人はずいぶんしっかりしたしつけをしていると感心いたしました」

雅子さま3歳。モスクワで初めてのスキー。写真/宮内庁提供

モスクワ時代の雅子さん一家は、家族一緒に過ごす時間が多かったと、父の恆さんは語っています。週末は郊外の大使館別荘に足をのばし、家族そろってスキーやスケート、そり遊びをします。夏になれば、近くの草原を思いっきり駆け回って楽しんだそうです。
極寒の地、モスクワでの一家の生活は2年9カ月続きました。

 

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本文、キャプションは過去の資料をあたり、
敬称・名称・地名・施設名・大会名・催し物名など、
その当時のものを使用しています。
写真/渡邉みどり(クレジットのないもの)
構成/高木香織、片岡千晶(編集部)
この記事は2019年9月3日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

第1回「雅子さまの語学力を育んだ「家庭の方針」とは?〜幼少時のアメリカ生活と好きな童話」はこちら>>

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