常磐自動車道で24歳の男性に対して「あおり運転」を行ったあげく、暴行に及んだ人物がようやく逮捕されました。このところ、あおり運転による被害が社会問題となっていますが、残念なことに、世の中には、良識というものがまるでなく、平気で法やルールを破るどうしようもない人間が一定数存在します。

 

犯罪者に対して厳しいペナルティを科すのは当然のことですが、処罰したからといって被害を100%防げるわけではありません(こうした犯罪者は常識的な判断力を欠いていることが多く、厳罰が抑止につながらないケースは少なくありません)。
犯罪者を罰することも大事ですが、良識ある人間は、こうした人物といかに関わらないようにするのかという知恵を持つことも重要だと筆者は考えます。

今回の事件について断定的なことは言えませんが、公開されている映像を見ると、被害者の車は自動車道の追い越し車線側を走っているようです。加害者の車は、左側の車線から被害者の車を追い越し、その後、急ブレーキや蛇行運転などを繰り返し、路上で停止に追い込み、暴行に及んだと考えられます。

はっきりとした統計は存在しないので断言できませんが、今回の件に限らず、ネットで拡散しているあおり運転に関するつぶやきや動画を見ると、追い越し車線側を走っていて被害に遭うケースが少なくないようです。追い越し車線を遅い速度で走り続けるという行為は、実はルール違反であると同時に、自身が被害者になる確率を一気に高めてしまいます。

道交法上、高速道路で複数車線が存在する場合には、原則として一番左側の車線を走らなければなりません。真ん中、もしくは右側の車線は追い越し車線であり、遅い車を追い越すために使うというのが基本ルールです。
現実には、インターチェンジやサービスエリアの出入り、ジャンクションでの分岐などがあり、常にルールが厳密に適用されるわけではありませんが、基本的に、追い越し車線を遅い速度で延々と走り続けるのはルール違反と考えてください。

誤解のないように説明しておきますが、ルール違反があったとしても、あおり運転の加害者を擁護するつもりは1ミリもありません。筆者はこれまでも、いじめ問題やセクハラ問題などにおいて、被害を受ける方にも原因があるという考え方について強く批判してきました。

しかしながら、良識人のたしなみとして、野蛮な人たちと関わらないようにする知恵を持つことは重要だと思いますし、避けられる被害は避けた方がよいとも考えています。

追い越し車線をゆっくり走る行為というのは、道交法以前の問題として、事故や事件に巻き込まれるリスクを高めてしまいますから、避けた方がよい行為のひとつといってよいでしょう。

追い越し車線は通常、あまり車がいないはずですから、それを前提にかなりのスピードで追い越し車線を走るドライバーが一定数、存在しています。場合によってはあっという間に車間距離が詰まってしまい、追突されてしまう危険性があることに加え、一部のドライバーは、前をノロノロ走る車にイライラし、あおり運転やその後の暴行を誘発する可能性があります。

繰り返しますが、いくらイライラしたからといって、あおり運転を行ったり、ましてや暴力行為に及ぶことについて擁護するつもりはまったくありません。しかしながら、私たちは、正義を貫くために日常生活を送っているわけではありませんし、どちらが正しいのか相手を論破するために道路を利用しているわけでもないはずです。

 
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