実際、法制度という点でも、義務教育の位置付けは大きく変わっています。従来、教育を受ける権利を享受するためには学校に通うことが大前提でしたが、2017年には教育機会確保法が施行され、不登校の子どもが教育を受ける機会を失わないよう、政府や自治体による支援が定められました。

 
 

当初、この法案にはフリースクールや自宅での学習(いわゆるホームスクール)であっても義務教育として認める内容が盛り込まれていましたが、この項目については議論の末、削除されました。しかしながら、基本的な方向性としては、学校に行かなくても教育を受けることができる、あるいはそのような選択肢を子どもに提供するというのが法制度の大きな流れとなっています。

これは法律で定められた内容ですから、ゆたぼんについて議論する際にも、頭に入れておいたほうがよいでしょう。

学校教育は非常に効率のよいシステムですが、価値観が多様化している現代においては、十分に機能していないとの声もあります。画一的な詰め込み教育が中心となっている日本の場合、その傾向が特に顕著かもしれません。

ゆたぼんが大きな話題になったせいか、彼に対してかなり厳しい批判も寄せられていますが、中には、「(このままでは)モンスターになる」「協調性を学べない」「ダメ人間」といった口汚いものもあり、一部の発言は見るに堪えないものです。

彼を全力で罵倒している大人は、おそらくほぼ全員が義務教育を受けており、学校教育を通じて、協調性や他人を思いやる心、相手を尊重するマナーなどを学んできたはずですが、残念ながら学校で受けた教育はほとんど身に付いていないようです。少なくない大人が束になって10歳の子どもに罵詈雑言を浴びせている様子を見てしまうと、日本の学校教育システムについて限界を感じざるを得ないのも事実です。

子どもというのは社会の宝ですから、どうすれば子どもの教育にとってベストなのか、もっと建設的に議論する姿勢が必要ですし、こうした建設的な考え方こそ、本来であれば、学校でしっかりと教育すべきものといってよいでしょう。

前回記事「【あおり運転】理不尽な犯罪に巻き込まれないために、いま一番必要なこと」はこちら>>

 
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