そして、この本を読んで「なるほど、確かに」と思ったもう1つのポイントは、日本人はきめ細やかなメールや対応をしてくれるのですが、実質的にはそうしないと「怒る」人が多いということ、それが結果的にビジネスのスピードや判断を遅らせているのではないかという点です。マレーシアではあまり「炎上」というものがないないという話が書かれていました。

 
 

これに対して、本当にそうかどうか、マレーシアにだって怒る人はいる、炎上はある、日本人だっていろいろだ……という議論はあるかもしれません。ただ、日本企業とのコラボレーションを海外市場のプレイヤーがどう見ているかというインタビューを見ると、多くは「日本企業の対応は誠実だけれど、判断が遅い」という意見で一致しています。

社内調整に時間をかけ、その運び方が丁寧でないと怒られる…みたいな非生産的なことをやっていると、ビジネスチャンスはどんどん逃げて行ってしまいます。最近私もメールをほとんど使わなくなり、仕事のやりとりもほとんどSNSなどのチャットで済ませているのですが、そうすると「〇〇さま いつも大変お世話になっております。……」のような文面を逐一入れなくていいので明らかにスピードが速まります。

海外の話を書くと、とかく「移住歴が浅くて、その国のこと、この人はわかってない」「日本の一部しか見ていないで批判している」とバッシングされやすいのですが、海外に出たばかりのフレッシュな視点でこそ見えることは必ずあると思います。

できるだけデータの裏付けなどはあったほうがいいと思いますし、一般論的に「日本人は」「シンガポール人は」とくくる書き方には気を付けなくてはと思いますが、少なくとも著者はマレーシアに行ってはじめてこういうことを思った、という経験は事実。前回のスウェーデンの本でも同じですが、自分がすべてを経験できない中で、経験した人たちの肌触りのある経験談というのは、それ自体視野を広げてくれる貴重な発信だと思います。

前回記事「『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』から考える日本のこれから」はこちら>>

 
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