夫が残業する日は、妻が子どもを迎えに行く。妻が残業する日は、夫が迎えに行く。子どもとのコミュニケーションは夫婦それぞれがしっかり取っている。でも、残業した側が帰ってきたときにはお迎えをした側は寝ている。会話は極めて事務的な子供関連の連絡と、子供を通してしか、ない。

 
 

何らかの致命的な出来事があってというケースもあるものの、どちらかというと原因は日々の積み重ねで、感じていることを言っても言っても響かないことが諦念につながり、もはや怒るエネルギーもない……といったところでしょうか。場合によっては離婚の話し合いをする気力すら沸かないのかもしれません。

こういった、お互いに稼ぎがあるケースの場合、それでも離婚しないのは「とはいっても、育児の手としては助かってるから」「子供はパパが好きだから」。でもやっぱり、子どもが巣立っていったら一緒にいたいとは思えない……。

まぁそしたら別れればいいじゃないとは思うものの、それまで耐え忍ぶ時間は結構長い。子供にとっても両親がお互いに会話しない状況は健全ではないかもしれません。東京大学准教授で労働経済学と家族の経済学が専門の山口慎太郎氏著『「家族の幸せ」の経済学』では、最終章をまるまる離婚について割き、離婚しやすい法制度がDV抑止や女性の自殺防止につながると指摘しています。また、離婚した家庭の子どもは様々な困難に陥りやすいという現状があるものの、それは離婚そのものが引き起こすのではなく離婚による貧困によるものであり、離婚後の子どもへの支援が必要だと訴えています。

DVや自殺につながるような結婚は一刻も早く解消できることが望ましいですし、そうではないケースについても社会制度が変わることで、熟年離婚を夢見なくてもその前に何らかの解決につながる場合もあるのかなと感じます。どちらかが帰ってきたときに片方は寝ている、という状況には長時間労働も影響していると考えられ、働き方の見直しも必要そうです。

そして、こうした話に出てくる夫は、往々にして妙に動じない、変に忍耐力がついている人たちが多いのですが、恨みつらみが降り積もる前に、コミュニケーションをとったほうがいいですよ……。妻はまだ期待があるから怒ってるわけで、期待もされなくなったらおしまいです。(……と、女性向けコラムに書いても仕方ないのですが、共感してくださった方はパートナーにこの記事のリンクを送ってくださいね!)

前回記事「妻の負担感を生む「名もなき家事」問題をどう解決するか」はこちら>>

 
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