フードジャーナリストの小松宏子さんが、最新の食のトレンドを紹介します。 

 

実りの秋、新栗を使ったお菓子が待ち遠しい季節になりました。
美味しい栗菓子はたくさんありますから、どれを選んでご紹介するか悩ましいところですが、今回は絶対にはずさない、王道の3品をお教えしましょう。

①  栗の甘みがストレートに口いっぱいに広がる「栗きんとん」

栗きんとん1個¥248(税込)※全国百貨店でも取り扱いあり(詳細はこちら

栗そのものの美味しさをこれほどシンプルに、かつストレートに表現しているお菓子はこれをおいてほかにない、というほどの美味しさです。

「すや本店」は岐阜県中津川新町、木曽路の入口にあたる古い宿場町にあります。中津川の町はどこを歩いても恵那山が見渡せ、その恵那山麓のいたるところに栗の木があるのです。お店の成り立ちは古く、江戸の元禄年間に遡ります。「十八屋」の屋号で酢の店として創業。だから、今も「すや」の店名が残っているのです。

もう10年以上前になりますが、念願かなって本店へ取材に行く機会がありました。そのときに作る過程を見せてもらいましたが、本当にシンプルそのもの。
蒸した栗を皮から竹べらで出し、裏ごしして砂糖を加え混ぜ、やわらかく練って茶巾絞りにする、ただそれだけです。
ほくほくしっとりとした栗独特の香ばしいような甘みが口いっぱいに広がります。現在は地元の栗だけでは足りず、九州などの栗も使用しているそう。栗の種類でいうと銀寄という香りも甘みも強い品種です。材料は栗と少量の砂糖だけですから、栗の質が問われることは言うまでもありません。

秋のこの時期は、とにかく超繁忙期。毎年のパートの方たちを含め、100人態勢で竹べらで掻き出したり、茶巾に絞る作業をするのだそう。古くから変わらぬ手作りの味です。西木店には「甘味処 榧」もあり、栗ぜんざいなど、地元でしか食べられない甘味もあって、岐阜への栗旅はなかなか楽しいものです。

「すや」
岐阜県中津川市新町2-40
tel. 0573-65-2078