コンテンポラリーダンサーにハマった元女優の妻が、どうやらその男と浮気しているらしいことを、妻のフェイスブックで知った劇作家・海馬五郎。妻が他の男とあんなことを、こんなことを……!と妄想を暴走させた海馬は、妻への復讐計画を思いつきます。それは離婚したら妻に奪われるであろう1000万を使って、妻の投稿についた「いいね!」と同じ数ーー108人の女と関係すること……。
劇作家・松尾スズキが原案・監督・脚本・主演をつとめた『108~海馬五郎の復讐と冒険~』で、元女優の妻・綾子を演じるのは中山美穂さん。デビュー35周年を迎える来年、女優として、歌手として、中山さんが求める「新たな世界」とは?

 

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馬乗りになられてボコボコに殴られるシーンはぜひ笑って欲しい


クネクネとなんだか妖しく踊るコンテンポラリーダンサーは、その名も「ドクタースネーク」。小さな会場のかぶりつきの座席で、それをうっとりと見つめるのは、この映画のヒロイン・海馬綾子を演じる中山美穂さんです。あの中山さんが?!と誰もが思うに違いないこの役で、中山さんは監督に求められるすべてに「NO」と言わず、演じきったのだとか。

「企画の段階でお話を聞き、”やりたいです”とお伝えしました。完成した脚本も読み物としてすごく面白かったですね。主人公がどんどん勝手に追い込まれていく感じとか、でも最終的には愛ゆえの切なさもあって……そういうところもいいなと。

すでにいただいていた役も、あまりにぶっ飛んでいて面白くて、演じるのが楽しみでした。元女優という設定もあるし、そもそも登場するシーンのほとんどが実人物でなく、海馬さんが妄想の中の綾子なので、すべて別人格みたいな感じ。ふり幅の大きな演技を、思い切ってやることができましたね。綾子が馬乗りになった海馬にボコボコに殴られる場面なんかは、皆さんに爆笑してもらいたいです」

 


その夫婦にしかわからない「夫婦の不思議」


今回の作品では、松尾さんとリハーサルを重ねて役を作り上げていったという中山さん。その過程で最も印象に残ったのは、海馬五郎に対する綾子が「優しいけどどこか怖い」という言葉だったといいます。それは、どうしようもなく甘ったれの海馬五郎が、暴走する「いいわけ」かも知れません。

「海馬は、綾子のことを愛していたし、プライドも傷ついたんでしょうね。でもまさかそんなことに……っていう。でも、かわいいと言うか、憎めないと言いうか……バカですよね(笑)。実際にいたら、付き合えるかどうか分かりませんけど(笑)」

映画は海馬のマヌケな浮気行脚を爆笑と、一筋のさみしさとともに描いてゆきます。興味深いのはその行動に「綾子の浮気」が、ある種のスパイスのように効いていること。海馬は綾子にセックスを求めず、それでいて綾子が別の男と交わることには我慢がなりません。海馬とずっと一緒に生きると決めながら、心が別の男を思うことを矛盾とは思いません。海馬と綾子の関係には、「結婚=愛=セックス」という単純な理屈を超えた、その夫婦にしかわからない「夫婦の不思議」があります。でも結局のところ、綾子は海馬を愛しているのだと、中山さんは理解したようです。

「暴走する海馬から、開いた口が塞がらないような光景を見せられて、それでも「そこまでさせてしまったのは私」という風に思うわけですから。普通であれば言葉なんて出ないと思うんですよ。私ならちょっとおかしくなってしまうと思うし、それまでの人生のすべてが恐ろしくなってしまう。でも自身が衝撃を受けながらも、綾子は「あなたはどうしたいの?」と聞ける。ただ海馬のほうは、そんなふうに綾子さんが優しければ優しいほど、なんか怖い(笑)。結末はオープンエンドで解釈が見る側にゆだねられています。この先この夫婦がどうなるのか、観客の皆さん同様に私も気になっています」

 
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